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とあるβテスター、奮闘する
つぐない
とある鍛冶師、盗み聞く
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街区へと拠点を移しているのだ。

現在二人が宿泊している部屋は、二階の廊下を進んだ突き当りに位置する一室。つまり角部屋だ。
探索に行く際は転移門の前で待ち合わせるのが習慣となっているため、こうして彼女達の部屋を訪れる機会はあまりないのだが、パーティメンバーとして一応、部屋の場所は教えられていた。

―――別にアイツらを心配してるわけじゃねぇが、パーティメンバーとして様子見くらいはしておかねぇとな。……別にアイツらを心配してるわけじゃねぇが。

本当に心配していないのであれば、こうしてわざわざ足を運ぶ必要もないのだが、それを素直に認めてしまいたくなかった彼は、胸中で嘯きながら階段を登った。
そうして、二階に足を踏み入れた―――その瞬間。

『ああぁぁあぁああああっ!!』

聞き慣れた声による慟哭が、彼の耳を劈いた。
少年とも少女とも取れる中性的なその声は、今まさに彼が訪ねようとしていた二人組の片割れ―――ユノのものに間違いなかった。

『ああぁッ!ああああぁああぁぁぁッ!!』

廊下中に―――下手をすれば宿屋全体に響き渡るほどの、悲痛な叫び。
二人とパーティを組むようになってからそれなりに経つが、ユノのこんな声を聞くのは初めてのことだった。

「おいおい、マジかよ!」
その尋常ではない様子に、リリアの中の緊張感が一気に高まった。
咄嗟に走り出し、叫び声の発生源である角部屋へと急行する。
気が気でない状態のまま廊下を一気に駆け抜け、突き当りに位置する角部屋、木製の扉の前へと立った。
そのままノックもせずにドアノブを回―――そうとして、ふと思い留まる。

―――ここはそっとしておくべきか……?

当然といえば当然ではあるが、このSAOにおいて、プレイヤーが寝泊りできる部屋は施錠可能となっている。
SAOの宿屋は基本的に、部屋の借主(複数人で使用する部屋の場合、カウンターで宿泊手続きを行ったプレイヤーがこれに当たる)が施錠設定を変更しない限り、他のプレイヤーは自由に出入りすることはできない。
したがって、他人の宿泊している部屋を訪れる際は、ノックをするなどして入室許可を貰わなければならないのだが、部屋を利用しているプレイヤーのパーティメンバーについてはその限りではない。
初期設定ではパーティメンバーは入室可能となっており、彼女達は特に設定を変更していないため、二人とパーティを組んでいるリリアは、このまま扉を開いて部屋に雪崩れ込むこともできるのだ。
できるのだが―――しかし。

―――俺が行っても……、なぁ?

自分で言うのもなんだが、彼は口が悪い。
他人に対して素直になれず、ついついキツい言い方をしてしまうという自身の悪癖には、一応の自覚があった。
口を開けば悪態をつくことしかできない自分が
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