第31話 開けてはならない背中のチャック
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‥‥いない‥‥‥‥‥‥」
しかし、後ろには誰一人いなかった。
さっきまであんなに沢山いたというのに。
音もなく逃げたにしてはおかしい。
「クマさん‥‥‥みんなは?」
そう訊かれ、クマはすぐに答えた。
「みんな仕事が終わったから、消えたんだクマ」
「え‥‥‥‥!?」
俺の不安は恐怖へと変わり全身をそれが包み込んだ。
まさか、村長が消したのか。友達になったばかりのみんなを。
もしかすると次に俺も消されてしまうのではないか。
幼い時の俺はこう思っていた。
「あたしは‥‥‥どうなるの?」
「キミは、今から村長に会うんだクマ」
村長は私にあって何がしたいのだろう。
俺は少しずつクマに連れられ近づいて行く
恐怖の根源の入り口に立った。
ガチャッ
「開いたクマ。さ、入って入って」
クマに促されて中に入ると俺は驚いた。
「誰も‥‥‥いない‥‥‥‥‥‥‥」
村長どころか誰もいなかった。
あるのは簡単な木のイスとテーブルとタンス。
それ以外この部屋には何もなかった。
壁には窓しかなく出入り口もここだけで、
このリビング以外の部屋は無いようだった。
「‥‥‥自己紹介が遅れたクマ」
ジィィィィィィ‥‥‥
クマの後ろからチャックを開けるような音が聞こえて来た。
途端にクマの頭が外れて中から人の頭が出て来た。
「ふぅ、私がここの村長さ」
そこには特に目立った特徴のない
あえて挙げるならメガネぐらいの男が立っていた。
「まぁ、そう緊張しないでくれ」
クマの上の服を脱ぎながら村長はイスに座った。
そして、ズボンを脱ぐような要領で残りを脱いでいった。
「どうしたんだい?座っていいんだよ?」
俺はそう促されたのでイスを出して座りこんだ。
イスを引き出す音を最後に部屋には沈黙が響き渡った。
「‥‥‥‥‥‥‥」
俺は黙ったまま座り込んでいた。
会話のきっかけが出来ずに声が出せなかったのだ。
そして、俺がようやく勇気を出して声を出そうとした時
ようやく普通の会話が始まった。
「何故みんなを消したかを訊きたいんだね?」
核心をついた発言に俺は少し驚いたが
正直にうなずいた。本当の事だからだ。
彼は少し息をつくと流すように説明した。
「彼らは君をここに連れてくるための
君の中の親しみやすいイメージの集合体さ。
私の意志で消したわけではなく、彼らが仕事を終えたから
君の大脳の機能をある程度制御して
決められた大きなルールに沿って消えたんだ。
みんな君と遊べて、とても楽しかったらしいよ」
よく分からないが、そう言うことらしい。
その“だいのう”という所がど
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