2部分:第二章
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第二章
それでいぶかしんでいるとだった。母が彼女に尋ねてきた。
「どうしたの?」
「人がいたの」
こう母に答える。男の子がいた向こう側を指差してだ。
「男の子が」
「男の子が?」
「けれど今はいないの」
首を傾げさせながらの言葉だった。
「どうしてかしら」
「見間違いじゃないの?」
「見間違いかしら」
「よくあることよ。いたと思ったらいないのよ」
穏やかに笑って母は話す。
「そういうものなのよ」
「そうなの」
「そうよ。見間違いはよくあるわ」
優しい声で娘に話す母だった。
「気にしないことね」
「うん、じゃあ」
この日はこれで終わった。だが数日後だ。歩道を歩いている時にまた出て来たのだった。また向こう側にあの男の子がいた。
「また」
そしてだ。また声をかけた。しかしであった。
「ねえ、誰なの?」
こう男の子に尋ねた。
「貴方誰なの?」
しかし男の子はここでも答えない。そしてまた無言で立ち去りだ。そうして姿を消すのだった。
この時は手を持っている母には何も言わなかった。見間違いかと思ったからである。それでいぶかしんだままでその母に連れられて帰ったのだった。
そうしたことがまたあった。良子には何が何なのか全くわからなかった。どうして信号の向こう、あの曲が聴こえると男の子が出て来るのか。それがわからなかった。
このことを信号を見る度に考えるようになった。暫くその曲を聴きながら横断歩道を渡っても男の子は出なかった。しかしであった。
この日はまた出て来た。やはり向こう側に立っていた。
「またいた」
その男の子を見て呟いた。
「今日は会えたけれど」
それでだ。この日も声をかけた。するとだった。
不意に周りが白くなった。道は消え何もかもが白く光る中に出てだ。そうしてであった。
「通りゃんせ、通りゃんせ」
「ここは誰の細道じゃ」
「天神様の細道や」
あの曲が聴こえてきた。気付けば良子は一人だった。
母はいない。咄嗟に周りを見回してもだ。白い光の中に自分だけいるだけでだ。そうしてそこにいるのは誰もいなかったのである。
「あれ、お母さん?」
見回してもいない。本当に一人だった。
「何処に行ったの?」
「いないよ」
「ここにはいないよ」
そしてだった。周りから声が聞こえてきた。
「いるのは僕達だよ」
「僕達だけだよ」
見ればだ。目の前にあの男の子がいた。やはり白い狐のお面を被っている。
そして他にもいた。赤い着物でおかっぱの、狸のお面の女の子い丸坊主なのはわかるがその顔にひょっとこのお面を被った小坊主、その他の子供達もだ。皆着物を着ていてそれぞれ河童や童のお面を被っている。その子供達が良子の周りにいたのだ。
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