流転する生命
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たものを何もかも吹き飛ばして、感情を優先させるのが人間という生き物なのだ。卜部は誰に何を言われようと、意思をかえるつもりはなかった。
「はあ、何を言っても無駄のようですね。では、力ずくで教えて差し上げましょう。己の無力さを」
徹は大きく溜息をつくと愛刀を抜き放った。
「舐めるなよ小僧!お前如き…に…」
卜部が応戦しようと銃を抜こうとした瞬間には、首筋に刃が当てられていた。卜部には全く知覚出来なかった。熟練の悪魔召喚師である卜部がだ。
「私如きに?この有り様でよく言えるものですね」
「ウ、ウラベ様?!」
主である卜部の絶体絶命の状況に、リャナンシーも驚愕の叫びをあげるがどうすることもできない。徹が卜部の首を落とすほうが、リャナンシーが動くより早いと理解してしまったからだ。
「小僧、お前どれだけ……」
「さて、貴方如きには想像できない程度にはですかね。
そんなことより、少しは己の無謀さが理解できましたか?」
卜部が驚愕の声で問うが、徹には全く誇ったようなところがない。それどころか、当然の結果と言わんばかりであった。
「あなたの素の実力は私程度に負けるものでしか無いんですよ。その程度の実力で、ファントムに一矢報いるなどできると思っているんですか?」
「うるさい!それでも俺は!」
最早徹には、卜部が聞き分けの無い子供のように駄々をこねているようにしか見えなかった。
「そうですか……。それならば、いっそその生命ここで断って差し上げましょう!」
ここまで言って尚も聞き分けの無い卜部に、いい加減徹も頭にきていたのだ。刀を握る手に力が……。
「そこまでじゃ!徹よ、それ以上はやめよ。お前がここで手を汚す必要などない。その価値は此奴にはない。後は儂に任せてお前は下がっておれ。報酬は儂が相応のものを見繕ってやる」
「そうですよ、主様。こんな恩知らずは放っておきましょう。どこで野垂れ死のうが私達の知ったことではありません。これ以上、情けをかけてやる必要はありませんよ」
「師匠、悠華……。わかりました、後はお任せします」
雷鋼の静止とと悠華の言に気を抜かれた徹は愛刀を鞘に収めると、卜部に背を向けて歩き出す。最早卜部には微塵興味もないと言わんばかりであった。そのまま振り向きもせず、徹は夜の闇へと消えた。それを追う悠華は主と同じように消えるかと思いきや、直前に振り返り凄惨な笑顔で卜部に宣告した。
「忘恩の徒よ、己しか見えておらぬ愚か者よ。そんなに死にたければ勝手に死ぬがいい。ただ、もしこれ以上主様を煩わせてみよ。その時はその素っ首、妾が叩き落としてくれようぞ。努々忘れるな!」
徹はこの後卜部がどうなったのかは知
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