流転する生命
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のか!」
「うるせえ、この糞爺!あんたに何が分かる?!妻も子もいないあんたに俺の気持ちが分かるものか?!さあ、そこをどけ!あの子の顔を一目見たら、俺は出ていく!それであんたらとは縁切りだ!」
「あの娘は儂らに丸投げか?!そんな都合のいい話通ると思うてか?」
「うるさい、そこをどけ!」
卜部は多少強引にでも先へ進もうとする。雷鋼はああ言ったが、その実雷鋼は自分の娘を見捨てないだろうという確信が卜部にはあったからだ。最早、止まれないし止まるつもりもない。ただ、最後の未練を断ち切るためにも、一目娘の顔を見ておきたかったのだ。
「そこまでです!」
突如割って入った声と共に、強烈な衝撃を感じて卜部は吹き飛ばされた。
「ウラベ様ご無事ですか?」
「くっ、何が?!」
自分の身を案じて慌てて近寄ってきたリャナンシーを払いのけ、卜部は原因を見やった。
そこには見覚えのある黒髪の少年が立っていた。実際に会うのは久しぶりだが、少年の傍に侍る女性悪魔を卜部はよく覚えていたし、その独特の雰囲気を忘れることはなかった。間違いなく卜部が妻子の救助を依頼した相手である。
「なんのつもりだ?」
「いえ、聞き分けの無い愚か者がいたので、横面をはたいて目を覚まさせてあげようと思っただけですよ。正気に戻すには全然足りなかったようですが……」
徹は心底うんざりした表情でそう言ったが、傍に侍っていた悠華の物言いはもっと辛辣で卜部を蔑むものであった。
「だから言ったじゃないですか主様。この男は女を不幸にしかできない半端者です。主様がどんな思いでどれだけのリスクを負って、あの娘を助けたとかどうでもいんですよ。ただ、悲劇の主人公を気取っているだけの自己陶酔が酷いだけの人間です」
「お前らに何が分かる!」
「そもそも分かりたくありませんし、どうでもいいです。ですが、死にたいなら、最初から救出依頼なんか出さないでくれませんかね。あまりにも無責任じゃありませんか?」
卜部の叫びに悠華は微塵も揺らがない。それどころか、卜部の急所を的確に抉って返した。
「くっ!」
正論であり事実だけに、卜部には何も言い返すことはできない。
「卜部さん、考え直しませんか?復讐は何も生まないとはいいいませんけど、それは娘さんの人生よりも優先することですか?」
「……ああ、お前らの言うとおりだろうよ。それが正しいだろうよ!だが、俺はなっとくできねえ!妻が死んで、なんでのうのうと俺は生き恥を晒さなきゃならねえんだよ!せめて一矢でもファントムに報いなきゃ、死んでも死にきれねえんだよ!」
正論が常に正しい訳ではない。今のように感情の関わることでは特に。時に合理性や道理っといっ
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