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FOOLのアルカニスト
流転する生命
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矢は狙い過たず、カクエンの腕を貫く。たまらず子供の遺体を手放す妖猿の隙を見逃さず、最速でその背へと突進し神速の抜刀で一刀両断にする。LV差もあり、かつ不意打ちの矢で思わぬ痛撃をくらっていたカクエンには徹の姿を知覚する暇すらなく、上半身と下半身に両断されて、マグネタイトの残滓を残して消えることとなった。

 「主様、いきなり何をなさっているんですか?!」

 徹の突然の暴挙に憤懣やるかたない様子で理由を質すチェフェイ。それに答えず、徹は子供の遺体を調べ始め、確信を得たといわんばかりの表情で一人頷いた。

 「主様!」

 「そういきりたつな、悠華。折角の美貌が台無しだぞ」

 「ぷんぷん、お世辞を言っても駄目ですからね!何がどうなって、こんな暴挙に出たのか、きっちりかっちり説明してもらいますから!大体、私は怒った顔も美しいのです」

 「うん、そうだな。簡単に言うとだ。この娘は覚醒してるってことだ」

 「はい?!」

 「母親は本当に一般人だったみたいだが、流石はあの卜部の娘だ。才能があったらしいな。恐らく悪魔との遭遇と死に瀕したことで覚醒したんだろうな。つまり、母親は無理だが、この娘は蘇生の可能性はゼロじゃないってことだ」

 「……なるほど。この土壇場での覚醒ですか。でも、正直幸運とは言い難いですね。それでどうなされますか主様?まさか、蘇生を試みるおつもりで?」

 チェフェイは言外にこのまま母親と共に死なせてやれと言っていた。それはけして見捨てろということではない。むしろ、彼女なりの慈悲なのだ。なぜなら、蘇生が可能だったとして、蘇生したところでなんになるという問題があるからだ。
 漫画や物語のような土壇場での覚醒。まるでそれらの主人公のようだが、現実はそれ程優しくない。ど素人が覚醒したところで、いきなり戦うなどまず不可能だし、人間相手ならともかく悪魔と戦うなどもってのほかである。ましてや幼子である。悪魔から見ればただの餌から上質な餌にランクアップしたに過ぎないし、むしろいの一番に狙われることになる危険性を考えれば、覚醒はマイナスでしかない。どうあがいても、死の運命は変わらないのだ。幸運とは言い難いというのは比喩でもなんでもない紛う事なき真実である。
 そして、卜部の娘の場合、覚醒に伴い蘇生可能になったとはいえ、その可能性はLV(MAGの保有量)の問題で確実ではないし、大体にして蘇生できたところで、そこで父が原因で母が死んだという現実と直面することになる。しかも、元凶にして唯一の肉親である父も、ファントムに追われている以上遠からず死ぬことが確定しているのだ。つまり、少女は幼くして天涯孤独の身の上となるのだ。覚醒していて、悪魔に狙われやすいという嫌なおまけつきで。

 「悠華、お前の言わんとするとこは分かるし
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