流転する生命
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なってやれとまで言ってくるしまつである。ただし、ファントムにばれないように、関与の証拠を残さないようにと言う条件付ではあったが……。
(やっぱり、あの二人の間には余人には理解できない絆のようなものがあるんだろうな……。そんなに心配なら、自分で動けば良いのにな。素直じゃないというか)
その時のことを思い出し、内心で素直でない師に苦笑するが、実のところそんな軽い話ではなく、雷鋼には動けない理由が存在したのだが、それを知るのはもっと後のことである。
そんな徹の思いを余所に現実はどこまでも優しくなかった。カクエンは、妻の亡骸から子供の亡骸を引き剥がし、大口を開いて喰らおうとしていたのである。
「(ちょっと待て!流石に目の前でリアル人喰いとかマジで勘弁して欲しいんだけど!)」
「(人喰いくらいで何を今更……。もっと悲惨なのを何度も見てきたじゃないですか。大体、すでに死んでるんですから、生きながら喰われるよりはマシでしょう)」
徹のぼやきを呆れた様に切って捨てるチェフェイ。まあ無理もない。なにせ、この業界で仕事をこなすこと早1年余り。生きながらにして生体マグネタイトを搾取される苗床にされた者や、狂気の実験によって醜悪な化物に成り果てた者など、ある意味死ぬより悲惨な結末を幾度も見てきた徹に、目の前で行われようとする人喰いなどまだ温い所業でしかなかったからだ。
「(見慣れたことでも、好んでみたくないわ!それに……うん?なんでわざわざ娘の死体だけ喰らうんだ?)」
「(証拠隠滅の為では?母親の方は、あの半端者へのみせしめでしょう)」
「(いやいや、見せしめが目的なら、心臓を抉り出すなんて面倒な殺し方はしないだろ。みせしめにする意味で、もっと残虐に殺すだろう。あんな五体満足にしておく意味は無いからな。それに証拠隠滅なら、片方だけ残すのも理解できん。どちらの意味でも、両方を残すか両方喰らった方が効果的だろうが)」
(この光景を前にそこまで冷静に考えられるあたり、主様も大分染まってきましたね。それはさておき、主様の言うことにも一理あります。喰らうなら、生きている時の方が効果的でしょうに……。やはり、この人喰いには何か他の理由があるということなんでしょう)
今にも幼い子供が喰われようとしているのに、平然と客観的に考察できるあたり、己の主も大概だと思うチェフェイ。だが、言われてみればなぜ今更と言う疑問が出てくる。考え込むチェフェイを余所に、徹はあることに気づき、即座に行動を起こした。
(まさか、もしかして!)
衝動的な行動であることを自覚しながらも、雷鳴の如き閃きと湧いて出る激情に身を委ね、チェフェイに静止する暇すら与えずに弓に矢を番え、即座に撃ちだす。鵺討ち弓から放たれた雷光の如き
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