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FOOLのアルカニスト
流転する生命
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とやりあうことになる危険性を承知の上で、ここまで来ただけでも十分すぎますよ)」

 徹とチェフェイのやりとりがされている間も、カクエンは止まらない。2メートル以上の巨体を誇る妖猿は、娘を護るように抱きしめた卜部の妻を無情にも貫手で容易く貫き、母子共に心臓を抉り出す。どう見ても、即死であった。あれではいくら回復魔法をかけたところで蘇生は不可能であろう(回復魔法は傷を塞ぐことはできても、失った部位が再生したりはしないのである)。そうすると、心臓を抉られた母娘を救う手段は蘇生魔法、あるいは蘇生道具しかないのだが……。
 
 「(残念だが、蘇生は無理だな……。)」
 
 「(ええ、あの半端者の妻子は一般人という話ですからね。蘇生は不可能です)」

 一般人、愚者ですらない者に蘇生魔法・蘇生アイテムは効果が薄い。愚者ですら、LV10を超えなければ蘇生の可能性は五分である。これは一重に彼等の生体マグネタイトの保有量が足りないからである。蘇生魔法・蘇生アイテムは被術者・被用者の生体マグネタイトを用いて、精神までもが死に魂が離れる前に肉体を再生・再構築することで、蘇生を可能とするのだ。一般人はそも肉体を再生・再構築する為の生体マグネタイトが足りないし、肉体の死=精神の死であり、魂が離れるのも早いのだ。ゆえに、常人の蘇生は不可能というわけである。

 「(卜部のおっさんには悪いが、これはこのまま傍観だな。ここで下手に手を出して、ファントムともめるわけにはいかないしな。まあ、せめてもの情けだ。遺体くらいは回収しておこう)」

 「(ええ、それで十分だと思います。ファントムを敵に回すリスクを考えれば、遺体の回収ですら過分なことです。正直、私はこれ以上のただ働きは賛同しかねます)」

 チェフェイの非情ともいえる意思表明に、徹は無言で頷いた。卜部には悪いが、犠牲者の妻子は哀れだとは思うし同情もするが、仇討をしたいという程の思い入れは徹にはない。むしろ、ファントムとの敵対リスクを考えれば、この結果はある意味最善である。けして手を抜いたわけではなく、依頼を受け全速で直行したにも関わらず間に合わなかったのだ。徹に責任は無いし、妻子が死亡した以上、彼がすべきことはもうない。遺体の回収など、チェフェイの言うとおり過分なサービスであり、蛇足でしかないのだ。
 大体、どのような事でもとはいったが、徹の力の許す限りにおいてという注釈が入るのだ。今回の依頼は、ファントムと敵対する可能性がある以上、徹だけでなく雷鋼にも関わってくる。である以上、今回の依頼はその制限にかかるものであり、如何に恩義があるとはいえ、徹は雷鋼の許可が出なかったら、受けるつもりは無かったのだ。
 そんなわけで十中八九駄目だろうと思っていたのだが、雷鋼は意外にも許可した。それどころか、できるだけ力に
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