31話 『蒼き力』
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内なる淡い光に呼応した水のクリスタルは蒼き清浄な輝きを取り戻してゆき、それまで濁っていた海中に幾つもの光の筋が射し込んで明るさを増し、その場の者達は癒され人魚のエマも意識を取り戻す。
『懐かしい、暖かな海の輝き……… 』
他の人魚達と一緒になって、海中を美しく舞い泳ぐエマ。
「"……………"」
輝きの戻った水のクリスタルをどこか沈痛な面持ちでルーネスが見つめているのに気づいたシファは、心配になって声をかける。
「"ルーネスくん、どうかしたの?"」
「"────ん? いや、何でもないって"」
すぐに表情を変えて笑顔を返してきたのでそれ以上聞かず、レフィアの方にも目を向けると黙ったままルーネスを見つめていたようだが、シファの視線に気づいて目を逸らした。
( 何か、事情がありそうだけど…… )
『あなた方のおかげで、水の源のクリスタルに輝きが戻りました。本当にありがとう……』
人魚を代表して礼を述べるエマ。────よく見ると他の人魚達は長いブロンドの髪だが、エマだけは白銀のようだ。
『海中に没し、人の手が届かなくなった神殿の水のクリスタルを守ってきましたが………ある時、水のカオスが姿を現し私達人魚は奴隷として扱われました。水の源の力を我が物にしようとしたクラーケンは陸の人々を苦しめ、汚水を撒き散らして暗黒の海を広めようとしていましたが────それもあなた方の力で阻止されました』
「"そういや、オレらからも礼云ってなかったな。イカヤローの一方的な攻撃、止めてくれてありがとなエマ。そのせいで、傷ついちまって………"」
申し訳なさそうに云うランクに、エマは微笑み返す。
『あなた方のお力に少しでもなれたなら、それで充分です。あの……、水のクリスタルの欠片を持つあなたのお名前は?』
「"オレか? ランクって云うんだ"」
『ランク様………』
少しの間、互いに似たサファイア色の瞳で見つめ合ったあと、ランクから話を切り出す。
「"オレ達、そろそろ地上に戻らねェと。……水のクリスタルの事は、頼んだぜエマ"」
『はい……、お任せください。今度こそ私達の手で、お守りします……!』
「"─────!?"」
思いがけず、人魚のエマから額にキスされるランク。
「"ふあっ、うらやましいでス〜……!"」
「"あの子の前で少しカッコつけて見えるのは、気のせいじゃないよね………"」
ビルはとんがり帽子の中の闇から黄色く丸い双眼を爛々とさせ、シファはランクの態度の変化が気になる。
……レフィアは、ルーネスがさっきと違って人魚達を眺め回し鼻の下を伸ばしているのを見て、カチンとくる。
「"あんた、このまま人魚達と海底神殿に住
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