3部分:第三章
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うしてわざわざ絵から出てですし」
主はまた言う。
「これはやはり」
「だがそうだとするとだ」
クシャルーンは言う。
「どうすればいいのだ」
「この馬をお受けして頂けないでしょうか」
主はこう彼に述べてきた。
「貴方様をお慕いしておりますし」
「よいのか?」
「はい」
主は快くこう述べてきた。
「馬はその相応しい主のところにあるべきです。ですから」
「そうだな」
同僚も主の言葉に賛同するのだった。
「この主の言う通りだ。やはり」
「ですから是非」
主はまた彼に勧めてきた。
「お受け取り下さい」
「わかった」
そしてクシャルーンはそれを受けることにした。ここでもまた頼まれればそれが道理に合わない場合でない限り受ける彼の性格が出たのだった。
「では受けよう。それでいいな」
「はい、どうぞ」
「よしっ」
それを受けて馬の頬に手をやった。
「それでよいのだな」
やはり馬は答えない。そのかわりまたいなないた。
「いいようだな」
「変わった馬だ」
クシャルーンは同僚の言葉を聞きながら馬に対して言った。
「絵の中から出て来ただけでなく私について来るとはな」
そうは言っても嬉しそうなクシャルーンであった。それから彼はずっとこの馬と共にあった。そうして武勲を重ね続けやがては将軍になったという。
この馬はずっとクシャルーンと共にいたという。だが彼が大往生を遂げた後は程なく絵の中に戻った。そしてペルシアがイスラムに滅ぼされると絵は彼等によって何処かに売り飛ばされたという。今その絵が何処にあるのかは誰も知らない。噂によれば戦乱の中で焼かれたとも何処ぞの貴族か美術館が持っているとも言われている。だが真相はわからない。少なくともこの馬がまた絵から出たという話は伝わってはいない。
絵の馬 完
2007・10・1
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