4/19A やわらかい
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初めて触れたそこはしっとりとして柔らかく、それでいて弾力を持って俺を受け入れた。押し入った俺を拒む事なく、寧ろ求めるように蠢くのを愛しく感じながらその感触に酔いしれる。
「は、ぁ……」
吐き出す息すら艶を帯びて――。
「いい加減に、しろ。誤解招くだろーが」
ゆっくりと離れた唇はすぐに雰囲気をぶち壊すような事を言う。
「どうせこれからする事じゃねーか」
「……お前はムードってもんを考えろ」
「それはたった今アンタがぶち壊しやした」
「今のどこにムードがあった?! ……ンんっ」
うるさい唇をもう一度塞げば肩に手を置かれるも大した抵抗もなくそのまま押し倒す。
口ではそんな事を言いながらもただ照れ臭いだけなのだろう。たまに息継ぎのために離してやると、俺にも負けず劣らず熱い吐息が漏れ、瞼の向こうに見え隠れする瞳の奥には確かな熱がくすぶっている。
――その全てが、触れたいと、訴えている。
「ふ、ぅ……ぁっ、そ、ご」
名前を呼ばれれば答えるためにもう一度口付けて、まっすぐに瞳を見つめる。逸らされる事なく絡まり合う視線。
「……二年待ってた」
「俺は十年待ってました」
「そりゃ悪かったな」
「でももう待つ必要ありやせんね」
渾身の力で俺より大きな身体を抱き締める。これから抱くのだと思うと堪らなく興奮した。
唇と違って全然柔らかくない男らしい身体。無骨な手、広い背中、曲線が少ない体格。触り心地が良い訳でもねェ。ましてや男が好きな訳でも。
それでも、この人の男らしい身体が、良い。
「……優しくしろ。後ろは初めてなんだから」
「努力しまさァ。傷付けたい訳じゃねェんで」
少し怯えたように見上げてくる土方さんが愛しくて、できるだけ優しく着流しを脱がせていく。安堵したように吐いた息が首筋に触れて熱い。
「愛してまさァ」
「……ん」
目の前で揺れる黒髪に柔らかく触れるだけの口付けをすれば、短く返ってくる素っ気ないようでいて全てを肯定するその返事にどうしようもなく満たされた。
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