狂った宴の後に
[2/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
理解しながら、己に殉じられるモノだけだ。綺麗な部分しか見れないような人間は、きっと脳髄が腐っているのだろう。
希望の光は多くの為の道しるべ。
絶望の光は……少数の為の指標になり得る。
表裏一体。希望と絶望は己が生きる為に存在するとも言えるのだから。
優越でも愉悦でも無く、絶望の中にも抗う力が生まれ、それこそ人間の持つ最も尊い原初の光。
だからあの人は誰もに生きろと言う。だから華琳様は誇りあれと願う。
ある者には希望を説いて、ある者には絶望を教える。慕われ憎まれ矛盾の中で、誰かに生きる力を与えて行く。
それでいい。でも、秋兄と華琳様はやっぱり違う。
彼は中途半端なままだから、どちらでもあってどちらでもない。
隣に居るのが居心地よく思えるのはそのせいだ。答えは既に出てる。
――否定と肯定を曖昧にぼかし尽くすあの人も黒麒麟も……自分の存在だけを認めない。それが他人には生温くて、線引きの内側にだけは厳しい。
あたしの心はこいつらを殺しても痛まない。全く、これっぽっちも痛まない。それが普通で、それが正しい。
でも……なんでかな。
ダメなんだ。もう、ダメなんだ。
あたしは前みたいにはキモチよくなれない。
好きで堪らないんだけど、単純に血を浴びるだけでは少ししか満たされない。
ずっと願ってた事なのに、昔であれば一時的であれ満腹になっていたはずなのに今は満たされず、もどかしい気持ちが湧いていた。
こいつらは憎い。でも殺すだけでは満たされないんだ。
――きっと……精々秋兄と華琳様の描く世界の為に利用されて、死ねばいい……そういうこと。
渇望の満たし方が変わった、とはっきり分かる。
思えば郭図を自分の手で殺さないと選んだことこそ変化の兆しだったんだろう。
個人の欲求として持っていた憎しみが、怨嗟の心が、他人を利用する事で晴れようとしている。まるで、愛しい彼女のように。
やっぱり秋兄のせいだ。
複雑怪奇なあの人が、夕の想いをはんぶんこにした。
依存かな? 依存かもしれない。
夕にしてたみたいに、あたしは秋兄に依存しちゃうのかもしれない。
でも違う……と思いたい。
あたしの幸せはあの人の幸せじゃないんだから。
はんぶんこした夕の想いを、一緒に叶えたいだけってことにしておこう。
今はそれでいい。あたしの目標は安穏と生きることじゃないんだ。
あたしのしたいように、自由に過ごすことだ。その結果が死であろうとも構わない。
あたしはどうしたいか……簡単だ。欲求を満たしつつ、秋兄と華琳様のとこで戦えたらいい。
人間の想いが一番輝いてるのはあの二人の側で間違いないし、あたしが戦いたいと思えるのもあの二人の為だけ。
夕が
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ