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Transform! And we go ahead to the tomorrow…
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すか…」

「あっ、確かその人の事プロデューサーさんが言ってました…すごく優しい人だって」

「…そうですね。確かに鉱汰さんはヒーローでした。
あの人はいつもみんなの為に戦って、傷ついて…、それでも誰かの力になれることを心から喜べような人だった」

 今なら、かつて自分が憧れた始まりの彼女が鉱汰を「希望」と称したその意味が痛いほどに理解できる。
 そして、それを踏みにじったのが他ならぬ自分自身であるということも。

「(だった…?)」

「そうだ…。本当は僕だってあの人たちの為に戦いたかったはずなのに…。なのに、僕のせいで…」

 光実がポケットから葡萄の意匠の錠前を取り出す。
 それをじっと見つめる光実の表情は、逆光でよく見えなかった。

「あの、それって…」

「お〜い! しまむー!」

 卯月の思考を遮断するかのように、彼女の名を呼ぶ声が響く。
 その方向を見れば、未央、凛、プロデューサーの三人がゆっくりとこちらに歩み寄っていた。

「一度リハーサルを行いますので、会場の方へお願いします」

「あっ、はい! でも…」

「…僕のことならもう大丈夫です。行ってください」

 途中まで歩を進めた卯月が、光実の方を振り替える。
 言いたいことがあるが、それを伝える方法がわからないという表情だ。

「あの…よかったら私たちのイベント、見に来てください。ミッチさんが元気になれるように、みんなで頑張りますから」

 それに対する光実の答えは、優しそうな、だが、どこか悲しい笑みだった。


翌日、本番を当日に迎えた三人は、再びリハーサルの為にステージふと向かっていた。

 午前は別の仕事で隣町へいっていたため、少し移動を急ぐ必要がありそうだ。

「そういえば、しまむー。昨日のリハの時なんか気にしてたみたいだけど、なにかあったの?」

「あっ、いえ…ミッチさん、いないかなって」

「それって貴虎さんの弟さんだっけ?
そういえば昨日なにか話してよね」

「はい。…といっても、あんまりお話できなかったんですけど」

 半ば独り言のように、卯月が呟いた。
 結局、光実があの後姿を見せることはなかった。
 その事実が卯月の中に、焦燥感にも似たもどかしさを与える。

 余計なお世話なのは彼女自身が誰よりも理解できた…だが、卯月には、どうしても彼をこのまま放っておくことができなかった。

「ところで、プロデューサー。
話は変わるんだけどさ…なんか人、少なくない?」

 凛が周囲を見回す。
 三人もそれにつられて辺りを見回すと、確かに休日の午後とは思えないほどに人影という人影がなかった。
 まるで、映画に出てくるゴーストタウンか、もしくは、かつての災害直後
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