インフィニット・ストラトス
[8]前話
「…………」
ーーえーと。
状況を再確認するぞ。今俺は高校一年、入学式当日。自己紹介の真っ最中。目の前に広がるのは二十九名の女子。後ろには、たぶん半泣きの山田先生。……ところで山田先生って下から読んでも上から読んでも『ヤマダマヤ』だな。うん、いい名前だ。覚えやすい。どうでもいいなこれ。
で、自己紹介を終わるに終われない俺。何せ目の前の女子は『もっと聞きたいなぁ!』という期待に満ちた視線を俺に送り続けている。
おい、箒、おさななじのよしみで助けてくれ。ーーあ、また目そらしやがった。薄情者め。感動の再会はどうした。そんなのねぇけど。
(やべ、マズイ。ここで黙ったままだと『暗いやつ』のレッテルを貼られる)
俺は呼吸を一度止め、そして再度息を吸い、思い切って口にした。
「以上だ」
がたたっ。思わずずっこける女子が数名いた。どんだけ期待してんだよ。無茶言うな。
「あ、あのー……」
背後からかけられる声。涙声成分が二割増している。え?あれ?ダメだったか?
パァンッ! いきなり頭を叩かれた。
「いっーー??」
痛い、という脊髄反射より、あることが頭をよぎった。
この叩き方ーー威力といい、角度といい、速度といい、とある人物ーーよく知っているとある人物が同じような感じなんだが……。
「…………」
おそるおそる振り向くと、黒のスーツにタイトスカート、すらりとした長身、よく鍛えられているが過肉厚ではないボディライン。組んだ腕。狼を思わせる鋭い吊り目。
「げぇっ、関羽??」
パァンッ! また叩かれた。ちなみにすげぇ痛ぇ。その音があまりにも大きいから、見ろよ女子が若干引いてる。
「誰が三国志の英雄か、馬鹿者」
トーン低めの声。俺にはすでにドラの効果音が聞こえてるんだが、はて。
ーーいやしかし、待て待て待て。なんで千冬姉がここにいんだ?職業不詳で月一、二回ほどしか家に帰ってこない俺の実姉は。
「あ、織斑先生。もう会議は終わられたんですか?」
「あぁ、山田君。クラスへの挨拶を押しつけてすまなかったな」
おぉ、俺は聞いたこともない優しい声だ。関雲長はどこへ?赤兎馬に跨って去ったのか、劉備の許へ?
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