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絵の馬
1部分:第一章
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はそう大臣に答えた。
「それで」
「馬か」
「左様です」
「それでも速いのう」
 大臣はクシャルーンの話を聞いても首を傾げさせるのであった。
「御主の家はここから随分とあるのに」
「とにかく速い馬でして。まるで風のようでした」
「それでもじゃ」
 話を聞いても納得しない。というよりはできなかった。
「また随分」
「何なら御覧になられますか?」
 中々信じようとしない大臣に対して述べた。
「宜しければ」
「うむ、是非見てみたい」
 そう答えてクシャルーンと共にその馬を見た。大臣の目から見ても見事な馬だった。身体つきも実によく体格も見事なものに見えた。それでも納得できないのだった。
「確かによい馬じゃが」
「では乗られてみますか?」
「また機会があればな」
「左様ですか」
「それだけ見事な馬なら御主が持っているがいい」
 そのうえでこう述べた。
「よいな」
「わかりました。それでは」
「暫しの間わしの家におれ」
 そうして彼に部屋を貸すことにした。
「私にですか」
「都に居を移すのじゃろう?」
 これはもう決まったことであった。軍の士官になりその勤務地は都に定まっていたのだ。もう故郷の従者には残った僅かな家具を持って都に上がるように伝えてある。後は彼が来て居を移すだけなのだ。
「それならばな。暫しの間」
「宜しいのですね、それで」
「水臭いことはなしじゃ」
 クシャルーンが遠慮を見せたのでこう返してきた。
「御主の祖父には何かと助けてもらったしのう。だから」
「かたじけのうございます。それでは」
「うむ、軍務を頑張れよ」
「はっ」
 こうして彼は都に住むことになった。相変わらずその黒地に白斑の馬に乗って都を回っていた。都の者は皆その馬を見て振り向くのであった。
 彼はそれを自慢にも思わず軍務を務めた。そしてある時同僚の馬が急に身体を悪くしたのを見た。
「風邪か?」
「どうも。そうらしい」
 同僚は咳き込む馬を見て心配そうな顔を見せていた。
「大丈夫かな、これは」
「そうだな。少し休ませた方がいい」
 クシャルーンも彼の馬を見た。見れば確かに咳き込んで辛そうである。とても無理はさせられない状態であった。

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