インフィニット・ストラトス
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「うー、寒っ……」
二月の真ん中、俺は中学三年。受験のまっただ中だった。
「なんで一番近い高校の、その試験のために四駅乗らなきゃいけねぇんだよ……。しかも今日、超さみぃじゃねーか……」
昨年起きたカンニング事件のせいで各学校が入試会場を二日前に通知するという政府のお達しはそりゃあ無茶苦茶なんだが、何せ俺はただのどこにでもいる中学三年。何を言えると言うのか。せいぜいこうやって愚痴りながら試験会場に向かうのが関の山だ。
俺が受けようと思ってるいるのは、自宅から近い・学力真ん中・学園祭が毎年あるという私立藍越学園。
特に何が良いかというと、私立なのに学費が超安い。格段に安い。
なぜか。簡単だ。この学園の卒業生の進路、その九割が学園法人の関連企業に就職するからだ。
一時期の就職氷河期と呼ばれた時代ではないにせよ、卒業後の進路までケアしてくれるというのはありがたい。
しかも優良企業が多いのがまたいい。そして地域密着型。ある日突然僻地に飛ばされる心配も皆無。すばらしい。
「いつまでも千冬姉の世話になってるわけにもいかないしなぁ……」
うちはまぁ、ちょっとした事情で両親がいない。年の離れた姉が養ってくれているが、正直なところ長年そのことには引け目を感じている。
幸い、千冬姉の稼ぎがいいから貧乏でなないけれと、それがまた無理をさせているようで心苦しい。
本当は中学を出てすぐ働きたかったのだけれど、姉の力ーー主に腕力ーーには勝てず、現在受験生というわけで。
でもまぁ、この私立藍越学園に受かれば就職も決まったも同然。千冬姉に楽をさせてやれるというものだ。ーーまぁ、本人が楽をしたいかどうかじゃなく、俺がそうしたいからするだけなんだけども。
「……先のことはとりあえず受かってから考えよう」
この一年の猛勉強のおかげもあって模試での判定はA。普通に受かれば受かるはずなので、俺はたいした緊張もなく会場に入る。場所は名前だけは知ってるけどどこにあるか知らないという典型的な公共事業の産物こと多目的ホール。私立が市立の施設を借りるいうのもおかしな話なんだが、そこはまぁ地域密着型というアレだ。大人のアレコレだ。
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