番外編:パラレルワールドに行きます 〜その三〜
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立つ。そして、同時にもう一人の男が“イッセー”へと手を変化させた剣で斬りかかる。それを軽々と躱すイッセーだったがその顔は胃痛の為に歪んでいた。最もそれが分かる人間はこの場には彼しかいなかったが。
「アザゼル……なぜ、俺を?」
「悪いが、俺は娘の方のパパだぜ。お前の方のパパじゃねえよ」
「パ…パパ……だと?」
自分が知るアザゼルとは明らかに違う事に戸惑いを覚えるヴァーリ。だが“アザゼル”の方は特に戸惑いも覚えることなく、“イッセー”の方を睨みつけている。そんな視線が気に入らないのか“イッセー”は額に青筋を浮かべて顔を引きつらせている。そして、“アザゼル”は堂々と宣言をする。
「例え世界が違っても俺は―――子を守る! それが親としての務めだ!」
「……親」
「ヴァーリ。俺はこの世界の俺がどういうやつかは知らないが、一つだけ断言できることがあるぜ。……血がつながっていなくても、アザゼルとヴァーリという人物は―――親子だ」
「ふ……ふふふ。そうか……親子か。偶には親孝行というものをするのもいいかもな」
“アザゼル”の言葉に目を見開いたヴァーリだったが、やがて、掠れた声で笑い始めてそう呟く。そんな暖かな空気が流れる中、もう一人の親はここがチャンスだと思って“イリナ”に話しかける。
「“イリナ”、わが同胞の言う通りだ。私はお前を守らないといけないのだ。だから一刻も早くあの男から離れるんだ!」
「いやよ。あなたみたいな蛆虫以下のゴミクズの命令なんて聞かないわ」
暖かな空気は一瞬で崩れ去る。“イリナ”の余りの罵倒ぶりにこの世界のイリナは唖然として二人を交互に見つめる。性格はかなり違うが顔は自分の父親と全くと言って良い程同じなのでこの二人は親子なのだろうと見当をつけるがそれならば一体全体この冷たさはどこから来るのかと思って見ているとそれに気づいたT・シドーが“イッセー”を指差しながら声高に答える。
「全てはあの悪魔が我らの最愛の娘を誑かしたからだ!」
ああ、こいつら親馬鹿だ。この世界の住人の心はこの時そう思う事で一致した。そして、“イッセー”の方を見てみると明らかに辟易した様子で二人の親馬鹿を見つめていた。そんな様子にイッセーは大変なんだろうなと思わず同情の念を抱いてしまう。
「“ヴァーリィィィッ”! 早くパパの家に戻って来てくれよおおおっ!」
「パパが僕と“イッセー君”の結婚を認めてくれるまでは帰らないよ!」
「まて、いつ俺がお前と結婚することになったんだ?」
“イッセー”の疲れ切ったツッコミにも反応することなく“アザゼル”と“ヴァーリ”は親子喧嘩を繰り広げていく。その様子にイッセー達は、誰だ、こいつといった感じの表情で見つめる
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