3部分:第三章
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爪が伸びてきた。鍔競り合いになっていたがそれは次第に紅葉の優勢になっていた。そのうえでのこの爪であった。
「死ぬのじゃ。これでな」
紅葉の笑みがさらに禍々しいものになった。伸びる五本の爪はそのまま維茂の腹に襲い掛かる。鬼女はここで勝利を確信していた。しかしであった。
維茂もさる者だ。ここで紅葉が思いも寄らぬ行動に出たのであった。
「そうはいかんぞっ」
「何じゃとっ!?」
一旦後ろに跳んで間合いを離しそのうえで右にかわしたのである。それによりすんでのところで爪をかわした。衣を破られただけで済んだのだ。
「危ないところだったな」
「わらわの爪をかわしたか」
紅葉は今の維茂を見て顔に浮かべていた笑みを完全に消した。
「どうやら。やるようじゃな」
「腕に覚えがなくてここに来たりはしない」
維茂は再び刀を構えつつ紅葉に言葉を返した。
「決してな」
「ではわらわをどうしても倒すつもりか」
「名前は聞いた」
これが維茂の返答であった。
「それならばな。最早逃げることはできぬ筈だ」
「如何にも。それではだ」
その目がさらに赤く輝いた。禍々しさがさらに増す。
「死ぬがよいぞ。ここでな」8
「参るっ」
音もなく摺り足で接近し今度は突きを入れる。
「これならばどうかっ」
それは一度ではなかった。二度、三度と続けて突きを入れる。しかしそれは紅葉の身体をすり抜けるだけであった。ただ宙を突いているだけであった。
「むっ!?」
「見事な剣術なのは確かじゃ」
刀をすり抜けさせている紅葉は悠然と笑っていた。
「じゃが。それだけではわらわは倒せぬぞ」
「妖術か!?」
「さてな」
悠然と笑ってその言葉には答えない。
「何であろうな。しかしじゃ」
「むっ!?」
「これは幻ではないぞ」
今度は爪は伸ばさなかった。それで上から引き裂こうとした。維茂はそれを咄嗟に後ろに飛び退いてかわした。また危ういところで難を逃れることができた。
しかし今度はそれで終わりではなかった。何と手の平から次々の火の玉を打ち出してきたのだ。それで維茂を焼こうというのだ。
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