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遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン22 鉄砲水と手札の天使
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いるのも暇なので、長丁場になるかもとわざわざ寮まで一回戻って作ってきたお弁当でも食べようかと包みを開く。真っ白なおにぎりに別で持ってきた海苔を巻き、最近作ってみた浅漬けをポリポリやりながらかぶりつく。うん、ちゃんと米全体に塩の味がほんのりついて、パリッとした海苔の感触と相まってなかなかおいしい。こういうのを手前味噌っていうんだろうけど。あ、味噌もおかずとしてはいいなあ。今度こぼさずに持ち歩ける保存法を考えてみよう。いっそおにぎり自体の具にしてみようか。

『………!』

 あれ。ふと気が付くと目の前の子がこちらに振り返っていて、きれいな赤い目でじーっと残りのおにぎりを物欲しそうに見つめていた。

「えっと、欲しいの?」
『……ッ!』

 思わず声をかけると慌ててそっぽを向くが、視線はばっちりお米の方に注がれているのが丸わかりだ。その証拠に2個目を掴もうとして手を動かすとそっちに視線がついてくる。右に動かせば右を見て、左に動かせば左を見る、といった具合だ。ちょっと面白かったので1、2往復ほどしてから、あんまりいじめるのもかわいそうかともう一度声をかける。

「ごめんごめん。あいにく僕は動けないからね、こっちおいでよ。別に何もしやしないからさ、一緒に食べよ」
『………』

 これは、地雷踏んだだろうか。バリバリの警戒心と殺意のこもった瞳でこちらを見つめる彼女の白い顔を見ながら、冷や汗がつうっと流れていることにぼんやりと気づいた。見た目が人間の女の子だから、心のどこかで油断していたんだろうか。人間とは比べ物にならないぐらいの力を持った精霊だってことぐらい、自力で壁を壊してお社ごと外に出たことから気づいてもよさそうなものだったのに。僕の喉に押し付けられた鋭い(なた)がその証拠だ。目にもとまらぬスピードで後ろに回り込み、こちらの両腕を細腕からは想像もできないような怪力で抑え込みつつもう片方の手で首にこんなものを押し付けるなんて、並みの芸当じゃない。いまだに落ち着いていられるのは、もう命がけにはこの1年ちょいで慣れっこになったからだろうか。とはいえそれは全てデュエルでの話、こんなふうに物理的に命が危ないのは初めてで逆に現実感がない。

「え、えっと」
『……?』

 とにかく何か喋ろうとすると、首に押し付けた鉈を軽く動かすジェスチャーをする。いらんことしたらその場で首を斬るぞ、ってことだろう。だけど逆に考えれば、ともかくも喋るお許しが出たみたいだ。
 とはいえ、特に何か言いたいことを考えていたわけではない。さて、どうしようか。僕の精霊を呼び出したとしても、多分ここまで密着された状況なら何かしらのアクションを取る前にばっさりやられるだろう。というか、だから皆こんなピンチでも助けに出てこれてないんだろうし。アクア・ジェットをはじめ
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