ターン22 鉄砲水と手札の天使
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「あいっかわらず寂れてんねえ」
もう4回目になる頭にかかった蜘蛛の巣を払いのける作業を終え、思わず文句が出る。去年来た時も大概だったけど、今年は輪をかけてひどい。足元は雑草だらけだし、木の間には今どけたもの以外にも直径1メートル近い蜘蛛の巣がぽつぽつかかってるし、おまけにふと上を見ればカードの亡霊がゆるゆる飛び回っている。
「えーっと、道はこっちだったっけか」
こうは言ったものの、別に迷っているわけではない。地図あるし。稲石さんの廃寮を出てから一言も喋らないチャクチャルさんから何かしらの反応を返してもらおうと水を向けたのだ。
「いやー、今日は晴れてるね」
なるほど、これも無視、か。気まずい。これ以上やってもこっちが精神的にダメージ受けるだけで終わりそうだったので、諦めて無言で歩くことにする。結局例の古井戸にたどり着くまで、誰も何もしゃべることはなかった。
「どれ、もうカードは全部回収したはずだけど……」
この地点のみにピンポイントで地震なんて、カードの仕業としか考えられない。ただ問題は、そんな強力な精霊がいたのならもっと早くに誰かしらが気づいてなきゃおかしいということだ。つまり、最近になって誰かが捨てたカードなのか、あるいはその逆で……。相変わらず返事してくんないチャクチャルさんを少し本気で心配しつつ、自分の考えを口に出す。
「ずっと前からあるカードがたまたま前に来たときは見つからないようになってたか。で、いいんだよね?」
最後のセリフはチャクチャルさんへのものではない。井戸の奥深く、どうも土砂崩れか何かのせいで埋まっていたのが半分ほど出ていたらしい、かすかに見える小さなお社の一部とその前でこちらに背を向けてうずくまる茶色い和服を着た銀髪の女の子に対して確認を取ったものだ。
女の子は僕が声をかけてもピクリとも動かず、ひたすらじっとうずくまっている。腰のあたりに鋭そうな鎌を指しているのが少し引っかかったが、いざとなれば霧の王たちに助けてもらえばいいさと思い切って飛び降りてみる。
「よっ……あ痛っ!?」
『………』
女の子の手前格好つけようとした罰が当たったのか、着地の瞬間泥に足を取られて変な方向に足をひねってしまい、足首のあたりから嫌な感触が伝わってくる。これ、ちゃんと自力で上まで登れるだろうか。面倒だからってはしごやロープを持ってこなかった自分を呪いながら、湿った地面の上でどうにかあぐらをかく。
「い、痛ったぁ……!わ、悪いけど、しばらく休ませてもらうよ」
女の子の沈黙を肯定と受け取り、そのまま持ってきた荷物に手を伸ばす。稲石さんと別れたのがお昼ちょっと前。なんやかんやで今が12時半ぐらいだから、1時ごろには動けるようになるだろう。じっとして
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