早速プロブレム。
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解雇も、辞さないと思っています」
そこで、彼女は視線を落とした。
テーブルの上に一つ、影が出来た。
「……お願いします。
どうか、私を解雇してください。
解雇されれば、私は速やかにこの村を去ろうと考えています。
もちろん、倉庫、そして中にあった日常用品の類も、全て弁償しますので。
昨日今日で出て行く形にはなってしまいましたが、今まで迷惑をお掛けしました。
そして、この度は……」
彼女は顔を上げ、ラインの方に向き直った。
「本当に、申し訳ございませんでした」
そんな様子を見て、俺の心は疼いた。
アイリ先生に、出て行って欲しくないのだ。
だが、その思いはアイリ先生の瞳を見た途端、喉の奥で押し潰された。
覚悟。
彼女は、覚悟をしていた。
どんな判決が下されても、それを文句一つ言わずに受け入れる、その覚悟が。
その瞳に、俺の安易な思いが立ち入る隙は無かった。
そう。
ここで何もお咎めなしで終わったとしても、彼女自身が納得しないのだ。
彼女は、自分がそれ程までのことを仕出かしたと分かっている。
罪悪感は、裁かれることでしか解消することは出来ない。
例え俺が彼女を庇ったとしても、結果は変わらない。
そんな気がした。
俺は、迷っていた。
自分の気持ちを、正直に言うべきか、否かを。
だがそうした所で、果たしてアイリ先生は納得してくれるのだろうか。
分からない。
俺は、迷っていた。
アイリ先生の言葉の後、客間には静寂が訪れていた。
父さんも、母さんも、何も言わない。
何も言わず、ただただそこに鎮座していた。
その顔色は俺には、ひたすらに重く見えた。
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