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至誠一貫
第一部
第六章 〜交州牧篇〜
六十八 〜徐州へ〜
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事か。青州はどうなのだ?」
「はい。孔融さんが変わらず刺史としておられるのですが、此方もやはり……」
「そうか。豫州と状況は大差がない、という事か」
「それだけではありませんぞ、殿。……飛燕(太史慈)が、孔融殿の元を去ったとか」
 飛燕……太史慈か。
「彩。太史慈は孔融殿の麾下ではなかったのか?」
「いいえ。嘗て、孔融殿に大変世話になった事があったようで、その礼にと、黄巾党征伐の間に青州に身を置いていただけのようです」
「では、青州には名のある武官がおらぬ、という事か」
「はい。孔融殿は軍を率いて戦う事は得手としておりませぬ。此度の事に対応するのは困難かと」
 また、無為に庶人が犠牲になるしかないのであろうか。
 ……いや、看過すれば、後々まで後悔する事となるな。
「朱里」
「は、はい!」
「諸葛瑾は、徐州の何処にいる?」
「え?……あ、ええと、陽都県です」
「どのあたりだ?」
 慌てて、朱里は地図を広げた。
 彩と愛里も、共にそれを覗き込む。
「此所です」
 朱里が指さした場所には『琅邪郡』と記されていた。
「近いな……」
「殿!」
「わかっている。……だが、彩。見過ごす事が本当に正しい選択なのか?」
「それは……しかし」
 奥歯を噛み鳴らす彩。
「ご主人様、お気持ちは本当に有り難いです。……でも、私情を挟まないで欲しいんです」
「朱里。確かに、諸葛瑾の事もある。だが、お前も申したであろう? 庶人が幸せに暮らせる国を作る事が目標だと」
「…………」
「ならば、理不尽な賊に苦しむ者は、手を差し伸べるべきではないか。例えそれが、我らに縁のない者達であろうとも」
 我ながら、筋を通し過ぎとは思う。
 だが、言わずにはいられぬのだ。
「ですが、歳三さん。ご存じの通り、私達の兵は僅かに五千。それも、輜重隊を含んでいますから、戦闘には無理があります」
「わかっている。全軍、一度陳留に向かう」
「陳留?……では、曹操さんに?」
「そうだ。華琳はエン州牧、黄巾党相手に軍を動かす権限を持っている。その依頼で加勢するのならば、どうだ?」
「……なるほど。輜重隊は、そのまま陳留に待機させるのですね?」
 得心がいったのであろう、愛里が頷く。
「どうだ、彩。華琳の軍と共にならば、無茶ではあるまい?」
「……は。殿は、そこまでお考えだったのですね。浅慮に過ぎました」
「いや、地図を見てそこに考えが至ったまで。すぐに、華琳に使者を出せ」
「はっ!」
 華琳の事だ、既に察知しているやも知れぬが。
「ありがとうございます、ご主人様」
「気にするな。そうと決まれば、お前の知恵も必要となる。頼んだぞ、朱里」
「はいっ!」
 うむ、どうにか翳りが消えたようだな。


 陳留郡に差し掛かったあたりで、
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