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鏡に映るもの
3部分:第三章
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した中世初期の城であった。
 二人はその中の一室に案内された。ところがここでフリッツは。城の壁に鏡を認めたがそこであるものが見えなかったことを見てしまったのだった。それを見て微妙な顔になるがそこで奥方が二人に声をかけてきた。
「こちらです」
「こちらの部屋ですか」
「はい、こちらです」 
 案内されたのは背の高いベッドが一つ置かれている石の部屋だった。窓もただ穴を開けただけでそこを木の雨戸で閉めるものだった。装飾もなく木造の椅子が二つにテーブルが一つあるだけの。薄暗い部屋であった。
「こうした部屋しかありませんがお許し下さい」
「いえ」
 だがハインリヒは彼女の謝罪の言葉を微笑みで打ち消したのだった。
「私達の様な旅人を入れて下さっただけで有り難いことです。ですから」
「宜しいのですね」
「はい。身に余る光栄です」
「有り難い御言葉です。それでは」
 奥方はハインリヒのその言葉を聞いて落ち着いたような笑みになって頷く。そうしてその笑みでまた彼に対して言うのであった。
「御夕食の用意ができましたら」
「御夕食もですか」
「そうです。鴨が獲れましたのでそれを」
「鴨が」
「家の者が獲って来ました」
 こうハインリヒに答えるのだった。
「ですから。それをどうか」
「左様ですか。では御言葉に甘えまして」
「葡萄酒にパンもあります」
 中々豪勢であった。少なくともこの様な森の中にある城でそうおいそれと手に入るようなものではなかった。ハインリヒはそれを少し不思議に思いフリッツはかなり異様に思った。しかしそれは二人共、特にフリッツは顔には出さないのであった。
 何はともあれ奥方の話は終わった。二人は彼女が部屋から姿を消すとまずはそれぞれのマントや鎧、外套等を脱いだ。剣や斧も置いて身軽になるとあらためて大きく息を吐き出すのだった。

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