第一部 学園都市篇
第4章 “妹達”
八月二日:『女と猫』
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、今日もたっっぷり働いたからね……対馬?」
「あ〜……はい、そうですね……御迷惑をお掛けしました」
その愛穂が小萌に差し出した袋。高価そうな化粧箱には、『大吟醸 梅安 久兵衛』と記されている。
にやりと流し目で見遣られては、照れたらいいのか反省したらいいのか。兎に角言える事は、この女性は自分が色女だと言う事を自覚するべきである。非常に勿体ない話である。
「そーだ、対馬も小萌センセの引っ越し祝いに付き合うじゃん? 寿司も特上の奴が三人前あるし」
「えっ、特上寿司? マジですか、三年は食って無いっす」
「マジマジ。本当は後輩を連れてくる気だったんだけど、急用で来れなくなったじゃんよ」
その誘いは、十分すぎる魅力。大小の違いはあれどもどちらも紛う事なき美形の女教師二人と夜会とは。健全な男子であれば妄想した事くらいはあると思う。
加えて、特上寿司。この学園都市では、嗜好品の類いは高い。寿司もまた、回転しているものですらも結構値が張るのだ。この期を逃せば、次は何時になるやら皆目見当もつかない。
……以上の点から鑑みて。この男子垂涎の誘いに対して対馬嚆矢が取るべき選択肢は、たったの一つ。一つきりである。
「いやぁ、返す返す惜しいんですけど……明日も早いですし、もう完全下校時刻過ぎてますから」
『断る』選択を取り、告げる。一応、学生の身だ。こんなところで目をつけられては敵わない。
「はい、花丸ですよ〜、対馬ちゃん。学生の本分は勉学ですものね。うちの『三馬鹿』ちゃん達にも見習って欲しいです」
「ハイなんて言おうもんなら、みっちり座学コースだったってのに。あ〜あ、可愛いげ無いじゃん」
「アハハ……やっぱり」
それに二人の女教師は、そんな言葉を重ねる。一人は満面の笑み、一人は慚愧のしたり顔で。
端からそうだろうと読んでいた彼は、額に浮き上がった冷や汗を拭って。
「それじゃあ、またです。対馬ちゃん」
「また今度、じゃんよ。対馬」
「はい、じゃあ、また……月詠さん、黄泉川さん」
そして、連れ立って帰っていく。その後ろ姿が、隣の部屋に入るのを見届けてから。
「……ほらな、だから女と猫は信用ならねェンだよ」
そんな言葉を……真理を呟きながら、自らの部屋の鍵を開けて。開き、閉じる。
そして履き物を脱いで、上がろうとして────刹那、鼻先を何かが掠めるのを見逃して。
「……お帰り、義兄さん。随分、話し|込《・
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