第一部 学園都市篇
第4章 “妹達”
八月二日:『女と猫』
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、あんな状態の部屋に住める訳がない。
「えっと……上条くんとインデックスちゃんは元気ですか? あれから会ってないんで心配で」
「ええ、元気ですよ〜。私の部屋を台無しにするくらいには」
「そ、そっすか……」
気まずさから何とか会話のネタを絞り出した嚆矢に、ニコニコと……既に一、二杯引っ掛けたかのように据わった目で笑い掛けた、月詠 小萌教諭。
どう見ても目が笑ってはいない。その瞳には疲れと諦め、そして……酷く冷酷な気配があった。何か、悪いものでも取り憑きでもしているんだろうか?
「あ、これ、引っ越し蕎麦です。蕎麦アレルギーとか無いですよね?」
「大丈夫です、好物です。特に冷やしたぬきとか最高ですよね」
と、差し出された岡持。その中には、進言通りに引っ越し蕎麦が。ラップが掛けられているが、まだ温かいのが分かる。
「あはは、面白い冗談を言いますね、対馬ちゃんは? この世に『冷やしたぬき』なんて言う、非人道的で冒涜悪逆の極みのようなものが存在するわけ無いじゃないですかー」
「……えっ?」
──何か今、凄い事を言われたような。凄い笑顔で。凄い真顔で。
しかし、その一瞬の思考の合間にも時は流れ去る。気付いたのは、弛まず続けた修練の賜物か。嚆矢の背後に忍び寄ったその気配に、彼は──瞬時に身を屈めて、後方からの裸締めを回避した。
「ひゅう、さっすがじゃん、対馬。伊達に『先輩』の愛弟子じゃないね」
「勘弁してくださいよ、黄泉川さん……あと、破門された身としては嫌味にしか聞こえませんって」
それを成した女……緑色のジャージに身を包む、艶やかな肢体の女。警備員であり、即ち教師である彼女は黄泉川愛穂。そんな彼女に、苦笑いを向けて。
「もう、黄泉川先生……他校の生徒にまでちょっかいかけちゃダメですよ? そうでなくても黄泉川先生は肉体言語過多で誤解されやすいんですから。ね〜、対馬ちゃん?」
「ギクッ、べ、別に『躱さなきゃあの凶器を堪能できたんじゃ?』とか思ってないですから……!」
「あっはっは、小萌センセには敵わないじゃん。と、これ引っ越し祝い」
同じ高校の教師、知己である二人に挟まれてしまい微妙に居心地が悪くなる。見た目的には親子レベルの違いがあるが……どうやら気は合っているようだ。
「あ、『梅安 久兵衛』じゃないですか! 一口飲めば、星間飛行しているような夢心地だとか。でも、限定生産で滅多に出回らないって話なのに……良く手に入りましたね!」
「日頃の行いの賜物じゃん
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