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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第4章 “妹達”
八月二日:『女と猫』
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るってぇの、締まりのねぇ顔しやがって……ってか、ハゲ丸ってもう一回言ったら殺すかんな」


 そんな、在り来たりな夕暮れを当たり前のように。噛み締めるように、一歩一歩と────取り戻すかのように。


「うむうむ、菜譜の端から端まで喰ろうてやろうて! この『特製すかいたわーばーがー』とやらはとみに楽しみじゃ」
「うげふ!? テメ、いきなりは止めろ!」
「うおっ、何だ織田か……あれ、お前何時から居たっけ?」


 実体化し、背中に負ぶさった“悪心影(あくしんかげ)”……勧進帳(食いたいものリスト)を手にした織田市媛に、危うく頸動脈を絞め落とされそうになりながら。
 視界の端に見える、端整な嘲笑。一房に纏められた灰燼の如き黒髪と、夕焼けよりも尚濃い鮮血色の瞳。


呵呵(かっか)────何を言うておるか、下郎ども。初めから(わらわ)は居ったであろうに」
「そう言われると……」
「そうだったような気が……」
「しないでもないような気もするような……」


 揃って首を傾げた彼等の視線が外れた一瞬、燃え盛る三つの瞳が嘲笑を向ける。無論それは“這い寄る混沌(ニャルラトホテプ)”としての顔だ、直視すれば正気を奪われかねない無貌にして無尽の悪意だ。
 それを後輩連中に見せない辺り、まだ良心的な部類の蕃神なのだろう。まぁ、食事前の無粋は好まないと言う程度の事だろうが。


「────どうした、嚆矢よ。行かぬのかのう?」
「……………………」


 嘲る物言いに、不愉快の意思のみを返して。いつも通り、もう最近は慣れてきた嫌いがある、背中の重みを背負ったまま。
 歩き出す世界を心に刻む。大嫌いな、その赤色の夕焼けを望みながら────それでも。()()の己には与えられなかった、大事な『日常』を噛み締めて……。


………………
…………
……


 時刻、十九時ジャスト。完全下校時刻までもう僅か、故に急ぐ自室までのその道程を、バイク形態を取るショゴスで走り抜ける。
 あの後、後輩と市媛にハンバーガーを約束通りに奢って。頼みすぎると裏に連れて行かれてマスコットのお兄さんに『お話』をされると言う都市伝説(フォークロア)のある百円のモノだけだったのでブーブー文句を言われたりして、随分と時間までもを食ってしまった。


 故に走らせる、刃金の二輪車。神代の甲鉄で()たれた大鎧、南蛮胴。『七つの芸を持つ』とされる『螻蛄(ケラ)』の似姿を持つそれは、重厚な排気音(エグゾーストノイズ)を奏でながら。


「……ふぅ、間に合ったか」


 無事に帰りついた、自室のあるメゾン。その庭には飼いも野良も区別無く、数匹の猫が屯している。
 まあ、いつもの事なので、いつも
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