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鏡に映るもの
11部分:第十一章
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第十一章

「何だったのかな」
「無事だったのはいいですが」
「悪戯にもあったし」
 このことも言うが実際のところそれは彼等の中で大きくはなかった。あまり心に引っ掛かっていないがそれでも少しは思うのだった。
「全く。よくわからないな」
「はい。ですが若旦那様」
「何だい?」
「こういうものかも知れませんな」
 フリッツは釈然としないながらも主に対して述べるのだった。
「結局のところは」
「こういうものとは?」
「妖精というものがです」
 彼が言うのはこのことだった。
「妖精は。そういうものでしょう」
「よくわからないものだっていうのかい?」
「はい」
 答えはするがやはりその顔は釈然としないままであった。だがそれでも彼は言うのである。自分の主に対して少しずつではあっても。
「世の中わかることとわからないことがありますね」
「わからないこともある?」
「またわかります」
 こう答えるフリッツだった。
「より長く生きておられれば」
「世の中にはわからないものもあるものなんだね」
 ハインリヒは従者の言葉を聞いて首を傾げる。彼はどうもまだそういうことがわかっていないようだった。これもまた若さであろうか。
「そういうものなんだ」
「そうです。人間の中でもそうですし」
「うん」
「ましてや相手は妖精です」
「妖精・・・・・・」
「そう、妖精です」
 また答えるハインリヒだった。
「相手が妖精ならば余計に」
「わからないこともあるんだね」
「というよりわからなくて当たり前なのでしょう」
 彼はまた主に述べた。
「人間ではないのですから」
「人間ではないからなんだね」
「人間でもわからないことが多いのです」
 フリッツの言葉は宗教というよりは哲学であったがこの時代は欧州の哲学は完全に神学、即ちキリスト教に属していたものでありはっきりと分けられてもいなかったので哲学という概念は語るフリッツ自身にとっても実に希薄なものであった。だがそれでも彼は言葉を続ける。
「ですから。人間でない妖精なら」
「当たり前ということだね」
「そう思います。それについて考えを突き止めていくのもいいでしょう」
「それも?」
 今の言葉はこれまたハインリヒにはわからないものであった。
「ですが置いておいてもいいのです」
「どっちでもいいものなんだ」
「答えは一つではありませんから」
「答えは一つじゃないんだね?」
「どちらも正解の場合もあればそうでもない場合もあります」
 またしても哲学的な言葉であった。
「ですから。それは」
「考えても考えなくてもいいんだ」
「それで若旦那様はどうされますか?」
「僕かい」
「そうです。若旦那様は」
「そうだな」
 従者の言葉を受けて腕を組んだ。そう
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