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至誠一貫
第一部
第六章 〜交州牧篇〜
六十七 〜別離〜
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っちも運んでよ」
「あいよ〜」
 斗誌と猪々子が、兵を指揮しつつ、麗羽らの私物を城に運び込んでいく。
 南皮に赴任した際は、衣装や身の回りの物だけで、荷車が列を成したらしい。
 今は格段に減ったとは申せ、それでも膨大な量には違いない。
「はわわ、ま、まだ車が続いていますよ?」
「い、一体どのぐらいあるんでしょうね?」
 朱里と愛里が、呆れながらそれを見送る。
「詮索しても仕方あるまい。参るぞ」
「あ、はい!」
「ま、待って下さい!」
 二人を連れ、城下を歩く。
 暫し、このギョウも見納めとなろう。
 目立たぬように、深編笠を被り、街を漫ろ歩く。
 ……とは申せ、愛里と朱里を連れている男など、私以外には該当する者などいる筈もない。
 私と気付く者もいるが、騒ぎ立てる事なく見送っている。
 私の意図を察しての事であろうが、非常に有り難い。
「相変わらずの活気だな」
「ええ。街も一区画、新たに整備したんです。ね、朱里ちゃん?」
「飲食店の数が増えてきたので、主に屋台を出す為の場所を作ってみたんです。そうする事で、人混みも分散出来ますから」
「そうか。留守中、本当にご苦労であった」
 愛里は微笑んで、
「いえ。嵐さんや元皓さんのお陰です。それに、朱里ちゃんがいてくれましたから」
「そうか。……朱里」
「は、はい!」
「どうであった? 実務に携わってみた感想は」
「……いろいろと、本で学んだ事とは違うと感じました。机上の空論、とはよく言ったものだと」
 ふむ、諸葛亮程の者でも、やはり実務は勝手が違うか。
「愛里ちゃんとは、水鏡塾で一緒に学んだ仲ですけど……。正直、今では随分と差をつけられてしまったな、って」
「そんな事ないよ。朱里ちゃんは私塾で一番だったもの。街づくりでも、私が気付かないところを指摘して貰えたりとか」
「ううん。やっぱり、私はまだまだだよ。愛里ちゃんだけじゃない、嵐さんや元皓さんにも、風さんとか稟さんにも敵わないよ」
「朱里ちゃん……」
「でもね。その分、私には目標が出来たから。……いつか、みんなに追いついてみせるって」
 ほう、良い眼をしているな。
 今の朱里ならば、決して絵空事には終わるまい。
 あの諸葛亮が、更なる高みを目指すか……楽しみな事だ。
「愛里、朱里。お前達はどうするつもりだ?」
「……今後の事、ですね?」
「そうだ。嵐や元皓は歴とした官吏、勝手に身動きは取れぬ。だが、お前達は自由だ、望む道があるなら聞かせよ」
 二人は互いを見つめ、頷き合う。
「私は、助けていただいてからずっと、歳三さんをお仕えする唯一の御方と思っていました。今も、その気持ちに代わりはありません」
「そうか。朱里はどうか?」
「……私は、民の皆さんが幸せに暮らせる世を創りたい、その為に
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