暁 〜小説投稿サイト〜
とあるβテスター、奮闘する
つぐない
とあるβテスター、慟哭する
[10/10]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
合える仲が、すごく……羨ましくて。
そんな親友同士の二人だから、僕は───力になってあげたいと、思ったんだ。
そんな二人のことが、僕は───

「……僕は、サチのことが好きだった」
「うん」
「サチと、ルシェと一緒に、三人で過ごしたあの時間が───好きだったんだ」

最初は、シェイリと二人きりなのが当たり前だった。
かつて仲間を裏切った僕が、《投刃》と呼ばれた僕が、誰かと親しくなるなんて、そんなのはおこがましいことだと思っていた。

だけど。いつの間にか、僕の周りには大切な人たちが増えていた。
他の全てを切り捨ててでもシェイリだけを守ると、そう決めていたはずなのに。
あの小さな喫茶店で、ルシェやサチと一緒に過ごした時間が―――彼女たちの笑顔が、僕にとってもかけがえのないものとなっていた。
“切り捨てる”という選択肢が、僕の中から消えてしまうほどに。
湧き上がる殺意に身を委ねてでも、二人を引き裂いた者に復讐してやりたいと思ってしまうほどに。

この胸の疼きは、殺戮への渇望でも、復讐への憤怒でもなくて。
サチを失ってしまったことへの、あの温かい時間が永久に失われてしまったことへの、どうしようもない悲しみだったんだ───


「ユノくんは自分勝手な理由で人を傷付けたりしないって、わたしは信じてるよ。だってユノくん、こんなに優しいもん」
だから、とシェイリは続ける。

「ユノくんは、もう《投刃》なんかじゃないよ」
慈しむような、温かな声で───シェイリは言う。

「人殺しなんかじゃ───ないよ」

彼女の小さな唇から紡がれたのは、僕が欲してやまなかった言葉だった。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ