つぐない
とあるβテスター、慟哭する
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いことが。
βテストの頃。第9層でのボス攻略戦を終え、当時のパーティメンバーとの話し合いになった時、僕は全てを諦めていた。
全てを諦めて、全てを断ち切るつもりで、仲間だったはずの彼らを殺した。
その後、どこまでも追いかけてくるプレイヤーたちに嫌気が差しながらも、どこか憂さ晴らしをするように、挑んできたもの全員を───殺し続けた。
あの頃の僕は、例え仮想世界の事といえど、人を殺すことに何の躊躇いもなかった。
攻撃を払いのけ、ナイフを抜き放ち、急所を狙い―――襲ってきたプレイヤーがポリゴン片へと変わるのを、何の感動もなく見つめていた。
そんな日々が続くうち、僕は自分でも歯止めが利かなくなっていた。返り討ちにされ、悔しそうに歯噛みしながら消えていく襲撃者の姿を見て、時には高揚感すら覚えた。
そんな―――過去の僕。
ソードアート・オンライン・クローズド・ベータテストにおける唯一のオレンジプレイヤー。
βテスター、《投刃のユノ》。
シェイリやみんなのお陰で、《投刃》という名の呪縛から抜け出すことができたと思っていた。
このゲームが始まってから、半年以上の時が経って。ようやく僕は、自分がオレンジだったという過去と決別できたような気がしていた。
していた―――けれど。
「殺してやりたいよ……!サチを奪った奴らを、ルシェを悲しませた連中を、全部、全部ぶっ壊してやりたいよ……ッ!!」
サチが誰かに殺されたと気が付いた時、僕の頭の中を真っ先に占めたのは、「復讐」の二文字だった。
黒猫団を襲ったプレイヤーを今すぐにでも捜し出して、ありったけの殺意をぶつけてやりたかった。
彼女の命を奪った連中に、あの穏やかな日々を奪った連中に、その命を以って償わせてやりたかった。
『僕の邪魔をするなら───僕の前に立ち塞がるなら、相手が何人であろうと、誰であろうと……殺す』
第1層でディアベルたちと決別した時に、僕が彼らに向けて言い放った言葉。
あの時、僕は自分で口にした言葉に震えが止まらなかった。自分で口にしておいて、本当に人を殺した時のことを思い浮かべて、身体が勝手に震えてしまった。
……だけど。こうして本当の悪意を前にした時、僕は真っ先に「復讐」のことを考えた。
人を殺すということに、恐れおののいていたはずだったのに。
サチに悪意を向けた連中をこの手で殺せないことが、今は何よりも悔しかった。
「……眠れない間、ずっとそればっかり考えてた。黒猫団を襲った奴らを、同じ目に遭わせてやりたいって。僕のこの手で、殺してやりたいって……!」
「ユノくん……」
「おかしいよね。そんなことしたら、僕も同じ人殺しになっちゃうのに。二度とPKはしないなんて言っておきながら、結局僕は、人殺しのオレンジのままなんだ……」
口
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