つぐない
とあるβテスター、慟哭する
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「サチのいたギルド……月夜の黒猫団っていうんだけどさ。いつか攻略組になって、みんなを守れるようになりたかったんだって。ほんと……、僕とは大違いだよね」
誰かを守れるようになりたいと願い、そのために戦い続けてきた彼らは、最期の瞬間、何を思っただろうか。
守ろうとしてきた者に裏切られ、突然仲間を殺されて、今まさに自分も殺されようとしている時に、彼女は―――サチは、何を思ったのだろう。
自分の境遇を嘆いただろうか。
自分を殺した相手への恨みを募らせただろうか。
自分をこんな目に遭わせた運命を呪っただろうか。
いくら考えたところで、答えなんて出るわけがない。当たり前だ、僕はサチではないのだから。
日本には「死人に口なし」なんていう諺があるけれど、この場合、まさにその通りなのだろう。
そして、それは―――黒猫団の面々をPKしたプレイヤーたちも、そう思っているに違いない。
《ユニオン》が悪質プレイヤーへの取り締まりを強化している今、目を付けられるとわかっていて堂々と人を襲うプレイヤーなんていない。
一つのパーティを全滅に追いやったからには、例えPKを行っても、周りにバレることはないという自信があったのだろう。
PKが行われた第29層迷宮区は、トラップ多発地帯だということで知られているダンジョンだ。ポータルトラップを利用して分断したか、結晶無効化エリアに誘い込んだか……。いずれにせよ、目撃者が付かず、かつ自分たちが圧倒的に有利となる方法を取ったのだろう。
目撃者がいなければ、自分たちがオレンジだということを、誰かから《ユニオン》に告げ口されることもない。数日かけて悪行値《カルマ》回復クエストさえこなせば、カーソルをグリーンに戻すことすら可能だ。
自分たちが襲った相手さえ逃がさなければ、何の証拠も残らない。クエストをこなし、カーソルをグリーンに戻した後は、何食わぬ顔でどこかの街に潜伏していることだろう。
実に合理的で―――実に、悪質だ。
「……《投刃》なんて呼ばれてるけど、僕はもう二度と、PKなんてするつもりはなかった。誰かを傷付けるのも、誰かに悪意をぶつけられるのも……、もう嫌だったんだ。……でも」
でも。
それでも、僕は―――
「それでも―――許せないよ。サチを殺した奴らを、許せないよ……! っ、殺して…、やりたいよ……ッ!!」
隣に座るシェイリが、悲しそうな目で僕を見る。
だけど僕は、一たび口をついて溢れ出した感情を、自分でも制御することができなかった。
「悔しいよ……、くやしい、よぉッ……!」
血が出るほどに歯を食いしばり、爪が食い込むほどに拳を握りしめた。
―――悔しかった。
サチを失ってしまったことが。それが誰かの悪意によるものだということが。そいつらを―――この手で殺せな
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