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とあるβテスター、奮闘する
つぐない
とあるβテスター、慟哭する
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ぁ。いつの間にか、僕たち……というか僕なんだけど、結構、友達できてたんだなぁ……」
シェイリの小さな肩に寄りかかりながら、僕は自分が今まで辿って来た道のりを思い出していた。
このゲームに閉じ込められたばかりの頃の僕は、友達だの仲間だのといったことを考えている余裕もなかった。兎にも角にも強くなって、シェイリが独り立ちできるまで、彼女を守り切らなければ―――なんて、そんなことばかり考えていたっけ。
だけど、結局は僕一人で空回りしていて。彼女を守るなんて言いながら、いつかは置き去りにすることを考えていた自分に気付かされて……挙句に、勝手に一人で死にかけて。ぼろ泣きした彼女にマウントポジションを取られながら、何度も何度も殴られて。
そんなことがあって、僕は、僕のために泣いてくれた彼女を―――キバオウたちと快を分かった時、何も言わずについてきてくれた彼女を、これからずっと、何があっても守ろうと決めたんだ。

「アルゴの頼みでラムダに行って……、僕だけガラの悪いのに囲まれたりしてさ」
「ユノくん、わたしと別れてすぐに絡まれたっていってたね〜。さすがにびっくりしたよ」
「あはは。 でも、それがあったからリリアを見つけられたんだよね」
それから少し経った、春の日。アルゴから頼まれた(押し付けられた)仕事で、ラムダの裏通りにいるという女鍛冶師の正体を探ることになった僕は、シェイリと別行動になって1分も経たないうちに、そこを根城としている悪質プレイヤーの一団に絡まれた。
何とか彼らから逃げ出すことに成功し、たまたま飛び込んだ細い通路の奥で、ぶっきらぼうな態度で露店商をしていたリリアと出会ったんだ。

「その後、鉱石を取りにあの洞窟に行って、クラインに助けられて……。シェイリがいきなり僕のことバラすから、どうしようかと思ったよ」
「だって〜。ああでもしないとユノくん、ずーっとひとりでうじうじしてそうだったんだもん」
「う……、ひ、否定はできないけど……」
自分の考え方がネガティブだという自覚はある。だけど、こうもはっきりと言われるのは、それはそれでショックだったりするのだけれど。
というかシェイリ、リリアと知り合いになってから、ちょっと言い方がきつくなってないか……?
少し前に二人がかりで怒られた時、僕は不覚にも泣きそうになった―――というか、実際に泣いてしまったわけで。あの男の粗暴な物言いがシェイリに悪影響を与えているのは、火を見るよりも明らかだ。
リリア……君とは少し、話し合いが必要かもしれないな……。

「ま、まあ、そのお陰でリリアやクラインと友達になれたから、僕は感謝してるよ」
「えへへ。どういたしまして〜」
あの時の僕は、相手の好意を自分から拒もうとしていた。
《元オレンジ》、《投刃》、《仲間殺し》―――周囲からそう呼ばれて
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