4部分:第四章
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第四章
彼を直接見ている教授が言うのであった。
「君の進路が決まったぞ」
「進路がですか」
「ウィーンだ」
音楽の都である。今更言うまでもなく。
「ウィーンフィルハーモニーから話が来た」
「そこからですか」
「そうだ、大学を卒業したらすぐに迎えたい」
こう言うのである。
「そう言ってきている」
「そうなのですか」
文句なしに世界最高のオーケストラの一つである。ウィーンかベルリンか、長い間そう言われてきている。まさに音楽の都に相応しいオーケストラである。
そこに大学を卒業してすぐに声をかけられたのである。これは途方もないことだ。
だがフリッツは。静かにこう言うのであった。
「私はです」
「受けるな、勿論」
「まずは神父になります」
何とここでこんなことを言うのだった。
「神父になりたいと思っています」
「神父にだと」
「そしてそのうえで世界を回ります」
そうするというのである。
「そうしたいと思っています」
「何っ!?」
教授はそれを聞いてだ。思わず声をあげた。まずは自分が聞いた言葉が信じられなかった。何しろあのウィーンからの誘いだからである。
だからこそ。すぐに問い返した。
「私は聞き間違えたのか?」
「いえ、間違いではありません」
彼ははっきりと答えた。
「私が神父にです」
「なるというのか」
「いけませんか」
「神父になることはいい」
それ自体はいいというのである。
「しかしだ」
「しかしですか」
「そうだ。ウィーンだぞ」
彼にこのことを強調する。ウィーンからの誘いだということをだ。
「ウィーンから誘いを受けているというのにだ。いいのか」
「私は考えていました」
ここで彼は静かに言うのだった。
「笛を何の為に使うべきかを」
「笛をか」
「そうです、笛をです」
言わずと知れたフルートである。彼の笛は今はフルートである。そのフルートの音色はまさに右に並ぶ者がいないと言われるまでになっていたのだ。
その笛をである。何の為に使うべきかと今言うのだった。
「笛を何の為に使うべきか」
「ではその答えはか」
「まずは神父になります」
また言うのだった。
「神父になってそして」
「そして?」
「世界を回ります」
そうするというのである。
「そうしてです。世界を回って私の笛を聴いてもらいます」
「君の笛を」
「そうします」
彼は言った。
「それこそが私のするべきことです」
「ではウィーンからの誘いは」
「お断りさせて頂きます」
そうするというのである。
「そうさせてもらいます」
「そうか。決意は固いのだな」
「ウィーンからのお誘いは確かに有り難いことです」
それは否定しなかった。彼にしても
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