2部分:第二章
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第二章
「もっと笛を勉強するんだ」
「この笛をですか」
「いや、フルートだ」
それだというのである。
「もっとフルートを勉強するといい」
「フルートを」
「そうすれば君はもっとよくなる」
こう彼に話すのだった。ピアノの前で。
「フルートをやれば君は必ず素晴らしい奏者になる」
「わかりました」
それを聞いて頷く彼だった。
「それじゃあそのフルートを」
「頑張るんだよ」
ここで先生は微笑んで彼に告げた。
「それが君の為になる。いや」
「いや?」
「その音色が他の人の為にもなる」
こうも言うのであった。
「それがね」
「他の人の為にもですか」
「そう、なるんだ」
先生は彼に話した。
「だからだ。いいね」
「はい、フルートをやります」
こうして彼はフルートをはじめることになった。そうしてフルートを吹くとであった。家で練習しているとまずあの母親が言うのであった。
「フルート、上手いわね」
「そう?」
「上手いわ。あなたもそう思うわよね」
「うん」
父もそうだという。母のその言葉にだ。
「とてもね。いいよ」
「そうよね。吹けば吹く程よくなってるし」
「そうかな」
そう言われても自分では今一つ実感の沸かない彼だった。自分ではそうなのである。
「自分ではそれは」
「他の人が聴けばわかるのよ」
ところが母はこう言うのである。
「それはね」
「フリッツのフルートははじめて聴いたけれど」
父はそうだった。しかしそれでも言うのであった。
「いいな、確かに」
「そうよね。これは真面目に練習すればヨ本当に凄いことになるわよ」
「そうだね、なあフリッツ」
父は妻の言葉を受けながら我が子に対して告げるのだった。
「いいかい?」
「うん」
「御前は笛をどんどんやるんだ」
そうしろというのである。
「いいな、どんどんだ」
「先生と同じこと言うんだ」
「そうなのか。まあそうだろうな」
我が子の言葉を受けてこう返した。
「誰だってそう言うさ。御前の笛の音を聴いたらな」
「うん、だったら」
「もっと笛を吹くんだ、いいね」
「わかったよ、お父さん」
父にも言われた。そして母にもである。すると彼の笛の音はさらによくなってである。彼はその笛の練習をさらに続けた。やがて彼の笛は人だけが聴くのに留まらなかった。
学校の校庭で吹いているとであった。
まずは彼の笛を聴きに皆が集まっていた。それで聴いていたがそこにであった。他やがて猫が来たのであった。見れば一匹だけではなかった。
「猫!?」
「猫が来て」
「それに」
猫はフリッツの周りに集まった。緑の芝生の上に座って吹いている彼の周りにだ。そして側にある木の上にだ。別の生き物達が来たのである。
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