第二話
〜epilogue〜
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とを不思議に思わなくてはならないが、鈴野夜も大崎も真一が内密に頼んだこととして自分達で意図的に隠していた。そのため、一度も名が出なかったことに気付かなかったのだった。
話を聞けば一年程前、また司が警察に捕まったと聞き、真一だけでなく、夫妻も同行してこちらへと向かっていた。
しかし、何の因果か、三人の乗った車は崖崩れに巻き込まれ、その下敷きになって亡くなった。それも…直美が死んだのと同じ峠で…。
「そう…だったんですか。それじゃ、あの真一さんは…。」
「きっと司のことが気掛かりで、どうにか出来ないかとお前のとこへ行ってくれたんだろう。全く…亡くなった者にまで世話かけて…。でも、司はそんな人達にずっと見守られてたんだから、まだ幸せだったんかも知れんな…。」
孝がそう言って遺影を見ると、淑美もその目に涙を浮かべ、横にいた瑶子はそっと母へハンカチを差し出した。
「ありがとう、瑶子。」
「うん…。でも、司兄はきっと今頃、真兄と直姉のとこへいるんじゃないかな。今度は私達がちゃんと生きて、向こうへ行く時に怒られない様にしなくちゃね。」
「そうね。」
淑美はそう言って笑みを見せたのだった。
その後、大崎と鈴野夜は直ぐに家を出てバス停に向かい、そして丁度来たバスへと乗った。
瀬田一家はバス停まで見送りに付いてきて、二人へと山ほど手土産を渡してバスが見えなくなるまで手を振ってくれていた。
「なぁ、雄…。」
「何だ?」
「あの真一さん…本物だったのかな…。」
バスから過ぎ行く景色を眺めながら、大崎は鈴野夜にそう問った。
鈴野夜はそんな大崎が見ている景色へ視線を移し、その問いに答えた。
「本物と思えばそうだ。結局は想いの残り香の様なものだけど、余程気にしていたんだろう。私でさえ気付かなかった位だから。」
「お前でも?」
大崎は少し驚いた風に鈴野夜へと振り返ると、鈴野夜は困ったように苦笑した。
「そういうものもあるさ。人の想いっていうものは、他のどんなものよりも強い。善きにろ悪しきにしろね。」
そう言うと、鈴野夜は「少し寝るよ。」と言って目を閉じてしまった。これ以上話す気はないようだ。
「でも…会えて嬉しかったな…。」
大崎は再び外の景色へと視線を変え、そう呟いた。
彼はもうこの世にいない。彼女と同じように、もう二度と出会うことはない。
だが、不思議と悲しくはない。いつかまた出会える…それは自分が死んで長い年月を重ねた先…。大崎はそう感じていた。
その時には、きっと司や他の皆とも…。
今はただ、帰りの道のりを急ぐだけ。
バスは走る。懐かしき風景を後に、いつもの日常へと走って行く。
- また、いつか…。 -
彼はそう思った。
次に来たときは、皆と大いに笑い合いたい。こんな悲劇はもう
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