第二話
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久保広樹…彼は海外組織の麻薬密売にも拘わっていると考えられ、警察も常にマークしているが、その素顔をなかなか見せない。彼も彼とて、尻尾を掴まれれば命さえ危ういことを承知し、決して自分の手を汚さない。
「チッ!あいつしくじりやがったな!」
ここはとあるマンションの一室。そこで久保は苛立っていた。
「大崎のヤツか…。女殺しといて、よくおめおめと顔だせたもんだ。ここで殺っちまっといた方がいいか…。」
そう呟くや、彼はケータイを取り出して手下の一人に連絡を入れた。
「俺だ。お前、大崎を黙らせてこい。手段は問わねぇよ。今日中にやれ。」
そう言ってケータイを切ろうとした時、向こうが何やら騒がしくなったため、久保は切らずに耳を澄ませた。
すると、突然向こうから聞き覚えのある声が彼に話し掛けてきた。
「やぁ、久しぶりだねぇ。」
「…ッ!?」
それは鈴野夜の声だった。
いつも大崎と共にいた友人だと言うことは知っている。しかし、なぜ電話の向こう側に居るのか理解出来ない。
「あれ?驚いてるのかい?そんな訳無いよね。今からそっちに行くから。」
そう聞こえたかと思うと通話が切れた。
「…な…何なんだ…?」
久保は唖然としてそう呟くやいて、ふと窓から外の景色を見た。さして代わり映えのしない風景が広がるだけで、これと言って何があるわけでない。
「クソッ!」
久保はそう吐き捨てると、少ない荷物を纏め始めた。このマンションも知られたと考えて逃げ出そうとしているのだ。
だが、彼が恐れてるのは警察だ。決して鈴野夜ではない。鈴野夜が警察を連れて乗り込んでくる…久保はそう考えたのだ。
しかしその途中、突然照明が消え、室内は夕と夜の境にある鈍い薄明かりだけになった。
「な…!?」
急いで外を見てみれば、外灯や家屋の明かりは点いている。どうやらここだけのようだ。
「こんな時に…!」
不安と苛立ちの中、久保は手当たり次第にバッグに詰め込むと、それを担ぎ上げた。
「おや、どこへ行くのかな?」
その声は唐突に響いた。
久保はその声に驚き、あまりの事に腰を抜かしてへたり込んでしまった。
「誰だ!」
何とか虚勢を張ってそう怒鳴るが、この薄明かりの中で彼は怯えていた。
「誰?知ってるだろう?私だよ…。」
知っている…確かに知ってはいるが、この狭い部屋に何者かが潜んでる気配すらない中、その声に記憶の中の“彼"を重ねることなど出来ようもなかった。
「おやおや…随分と情けないねぇ。この程度で海外組織と組んでるなんて。」
そう聞こえたかと思うや、突然周囲に蒼白い焔が舞った。
「ヒィ…!」
久保は声にならない悲鳴を上げた。
これは人外の力…自分の知る「力」ではない。そう彼は理解し、何とか外へ出ようと這ってま
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