第二話
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一部が既に朽ち果て、手や足などは骨さえ露出していた。
「悪魔と契約したのか。」
「そう…だよ…。」
「なぜ…。」
「俺…もう…あの家に…帰れないって分かっ…てたんだ…。ちょっと失敗…して…あぁ、死ぬんだなって…分かってた…時、声…聞こえたんだ…。思わず…声に縋…たんだ…。」
「どうしてあの時言わなかったんだよ!」
鈴野夜の声は消え逝く光の中、廃工場の錆びた空間へと悲痛に響いた。
「言えないよ…雄兄…。ただ…俺のこと…ワルでもいい…から……憶えてて…ほしかった……。大好きな…皆…に……忘れ…ら……れたく…なか……た………んだ…………。」
それが彼の…瀬田司の最期の言葉だった。
鈴野夜が彼を抱え上げようとした時、もうそこには人と呼べるものはなかった。腐った肉と成り果てた人形の何かが横たわるだけ…。
「誰が…。」
怒りを顕わに鈴野夜が呟いた時、そこに何者かの影が動いた。
「誰だ!」
「私だよ。憶えているかい?」
そう言って姿を見せたのは、悪魔だった。
「お前…レラージュ。」
何十年も前、一度だけ対峙したことのある悪魔だった。尤も、その時は鈴野夜が勝ち、レラージュは時の狭間に逃げ込んだのだが。まぁ、そういった悪魔はかなり多く、レラージュはその一柱だった。
「何故お前がここに居る!」
「そう怒鳴るな。今の私には何の力も無いのだから。」
レラージュがそう言った時、鈴野夜はメフィストが話を付けてくれたと確信した。ここで嘘を並べても、レラージュには何の得もない。それどころか、ここで嘘を並べて続ければ自分の身が危ういことを知っているのだ。
レラージュの話では、司は久保によって刺殺された。
司は久保が買い取った麻薬を売り捌く売人をしていたが、司は足を洗おうと警察へと向かった。それを久保の手下が引き戻し、有無を言わさずその胸にナイフを突き立てたのだ。
死の直前、その凄まじい感情の渦にレラージュは引き寄せられ、司と契約することにした。
だが、最期に残った感情は「忘れないでほしい…。」というもので、それを形にするだけの力を彼に貸し与えていたのだ。
「成る程…仲違いを好むお前にはピッタリだったと言うわけか。」
「放っておけ。だが、これで全てだ。我が主にかけて誓おう。」
「分かった。で、お前はどうするのだ?力がなければ帰れないだろ?」
「…。」
レラージュは言い返すことが出来なかった。と言うことは、どうすれば良いか分からない…途方に暮れていると言うことだ。
「仕方無い。司の最期の願いを叶えたのだし…私が力を貸そう。」
そう言われたレラージュは目を丸くした。
それもそうだろう。昔は敵として戦ったのだから。
「本当にそれで良いのか?今であれば、この私を完全に滅せる。」
「お前を滅ぼしてどうする?今は
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