第二話
V
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「なぁ、叔父さん。司のこと・・・。」
大崎は孝へと遠慮がちに問い掛けた。
孝は浅い溜め息を洩らすと、ふと開け放たれた窓から月を見て言った。
「・・・そうだな。お前には言っておいた方が良いかもしれんな。」
そう言ってから大崎を視線を移して話し出した。
「ありゃ、直美の葬儀が終わった後だった。急に様子がおかしくなってなぁ・・・。」
「様子が?」
「何というか・・・部屋に引きこもって出て来んようになったんだ。かと思えば家を出てそのまま何日も帰らず、心配して警察に行けば補導されている始末。それを何回か繰り返し、ある時、到頭刃傷事件を起こしちまってなぁ。」
「えっ!?」
大崎の表情が歪んだ。
彼の知る司は、明るく気の優しい子供だ。時にはやんちゃもしたが、子供にありがちなものばかり。良く一緒に遊んでもいたのだ・・・。
「それで?」
大崎は孝に先を促した。
「まぁ、相手は札付きの悪だったから、刑もそう長いことはなかった。相手の親も自分の子の不始末を承知しとったし、喧嘩を吹っ掛けたのは相手だったからな。」
孝はそこで言葉を切り、用意していた麦茶を口にした。そして再び溜め息を洩らして口を開いた。
「だが、少年院から戻ってくるなり、直ぐに悪い奴らと関わるようになってな。だから、わしは淑美と瑶子を実家に戻らせたんだわ。二人になにかあったら義父母に顔向け出来んからなぁ。」
そこまで言って、孝は再び麦茶に口をつけた。
やはり言い難い話だ。孝も緊張している様子で、どこか居心地悪そうにしている。
暫くは黙していたが、不意に大崎が口を開いた。
「司は、それから戻って来ることはあったんですか?」
「いや、ここ数ヶ月戻っとらん。どこで何をしてるやら・・・。」
孝はそう言いつつ、何度目かの溜め息を吐く。
大崎は何も言えず、悲嘆する孝を見ているしか出来なかった。
重苦しい空気の中、暫く二人は黙ったままだったが、そこへ玄関の戸が開く音がした。
「孝ちゃん、いたかい。」
それはシズの声だった。齢八十を過ぎて尚、元気一杯なお婆ちゃんだ。
その声に孝は立ち上がり、玄関に向かって返した。
「ここいたて。まぁ、上がってくれや。」
孝はそう言って階段を降りて行った。話はこれで終い・・・そう言うことなのだ。
シズと一緒にもう一人の姿がある。彼女は明子と言い、シズの次男の嫁だ。老いた義母を心配し、時折こうして面倒をみている。自身の両親は既に他界しているため、今では本当の親と思っているのだ。
「お母さん。これ、台所へ置いてくるから。」
「そうだねぇ。先ずは一休みしてからにしようかね。」
シズは腰を叩きながらそう言う。やはり歳には勝てないと言うことなんだろう。
そんなシズに、孝は問い掛けた。
「それじゃ
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