第二話
V
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直ぐに追いかけたにも関わらず、その姿は夜の闇にでも溶けたかのように消え去っていたのだ。
「ったく…どうしたってんだ?」
大崎は頭を掻きながら辺りを見るが、そこに何もない。そのため鈴野夜へと振り返って問い掛けた。
「雄。お前、何か気付いたんじゃねぇのか?」
そう問われた鈴野夜は答えに詰まった。彼が知り得たこと…それはやはり人ならざる存在の気配だったからだ。
故に、鈴野夜はこう返した。
「メフィストに来てもらう。」
その返答は大崎の体を硬直させた。その一言で大崎も理解したからだ。
- 悪魔が関係している。 -
それは即ち、大崎の手に余る状態だと言うことなのだ。
その後、二人は直ぐに孝の家へと引き返したが、その道すがら、大崎は意を決して鈴野夜へと言った。
「雄、頼まれてくれるか?」
それは“契約してほしい"と言う意味であることに直ぐ鈴野夜は気付いたが、それに返答するまでに時間を要した。
鈴野夜は友と契約するなど考えていなかった。それも、彼…大崎とは既に契約しているのだ。ただ、彼がそれを忘れているだけで…。
しかし、鈴野夜は言った。
「分かった。君は何を願う?」
静かに言った鈴野夜の声に、大崎は鈴野夜の瞳を真っ直ぐに見て返した。
「皆が幸せになってほしい。」
それは単純な願い…そう思えるが、これ程に難しい願いもない。
しかし、鈴野夜は笑みを見せて返した。
「分かった。その願い…叶えよう。これは契約だ。」
その答えに、大崎も笑みを見せた。
大崎は鈴野夜と初めて出会った時、彼は鈴野夜と直ぐに意気投合した。趣味が合ったのだ。
だが、暫くしてある事を目撃してしまい、大崎は深く考えざるを得なかった。
それは鈴野夜が蒼白い炎の中で罪人を裁いている光景だった。無論、その時の姿はロレだが、大崎にはそれが友人と同一人物であることは直ぐに見抜けた。
それが偶然だったのか、はたまた鈴野夜が態と見せたのか…それは判らないが、それでも親友であり続けたいと望んだ大崎は、メフィストにも許されてその記憶を留めていた。
それ故、彼は鈴野夜に依頼をすればどうなるか良く知っている。
だからこそ、彼は正式に依頼することにしたのだ。たとえ記憶が消されたとしても…皆が幸せになれるならと…。
「さ、行こう。あのまま飛び出して来たんだ。きっと今頃は皆が心配しているだろうからな。」
「そうだな。シズ婆さん、ぎっくり腰になってなきゃいいけど…。」
「言える。」
二人はそう言って笑い合った。些か不謹慎ではあるが、この二人にはこれ位が丁度良い。
そして二人は星明りの中、風と波の音を聞きながら戻ったのだった。
その後、家に着くと既に料理の用意が出来ており、皆はまるで何もなかったかの様に振る舞っていた。
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