第二話
V
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言って立ち上がった。
だが、鈴野夜は嫌な予感がしてならなかった。大崎は感じていない様だが、今日の“これ"は何かが変だ。それは始めからそうなのだが、一体何が起因しているのか未だに分からない。
第一、何故あの時、瑶子は孝へと連絡を入れたのか?出来すぎている…真一についても同じだ。
この件には司のことだけでなく…“あの事故"までも関係しているのではないか…と鈴野夜は考えていたが、それは大崎に知られない様にしていた。
しかし、それは遅かれ早かれ気付かれるだろう。鈴野夜は自分がどう動くべきか悩んでいた。
これは依頼ではない。人間そのものの問題であり、そこに善や悪がはっきりしていないものに関しては触れられないため、鈴野夜はもどかしかった。
「なぁ、雄。」
「…なんだ?」
考え事をしていたため、鈴野夜は返答に遅れた。しかし、大崎は気に留めることもなく続けて言った。
「直美…こんな騒ぎ見たくねぇだろうな…。」
「そうだな。」
鈴野夜はそう言うや、大崎へと笑みをを見せて言った。
「解決して帰ろう。」
だが、鈴野夜がそう言った矢先、それは起きたのだった。
一階から何やら争う様な声や物音が聞こえてきたため、二人は互いに顔を見合せて眉を潜めた。聞こえてきた声の中に…紛れもなく司の声があったからだ。
二人は直ぐ下へ行くと、居間で言い争いをする孝と司が目に入った。シズと明子、そして瑶子は争いを止めようとあたふたしていた。
「ふざけんじゃねぇ!俺が何しようが俺の勝手じゃねぇかよ!」
「馬鹿言え!人様に迷惑掛けてよくその顔を見せたもんだ!お前にやる金なんぞ一円も無い!」
どうやら、司は金をせびりに来たようだ。時代錯誤も甚だしい。
「司っ!」
大崎はその中に入るなり司の肩を掴んでその中から出すと、自分へと向かせた。
いきなりのことに司は大崎と鈴野夜を見て目を見開き、まるでさっきまでのことが嘘の様に大人しくなった。
「なんで…兄貴達が…!?」
そこには途惑いの色がありありと見てとれたが、不意に怒りが見え隠れしたため、鈴野夜は一歩前に出て司へと言った。
「一体どうしたんだい?君はそんな大声を張り上げる人じゃなかった筈だ。」
「…黙れよ…。」
小さな声だった。
しかし、そこに秘められた怒りは鈴野夜に伝わったが、他にも嫌な気配を鈴野夜は感じ取った。
その気配とは…。
「司。君、何をしたんだい?」
その問いに、司は再び目を見開いて鈴野夜を直視した。
「何って…何だよ…。」
そう返す司の表情は、明らかに何かを隠している時のそれだった。
そのため、鈴野夜は司を外へ連れ出そうと近付くや、司はその手を振り切って外へと駆け出してしまい、鈴野夜は大崎と共に彼の後を追いかけた。
しかし、二人は彼を見失った。
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