第二話
I
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もせずに勝手に裏口から帰らせたのだから、給料天引きに説教は当たり前だ。
しかし、そんな大崎に釘宮は微笑んで返した。
「気にすんな。事務所貸すって言った時、もう金取る気なんか無かったんだよ。お前の知り合いで、悩みがあって訪ねて来たんだろ?」
「そりゃ・・・そうなんですけど・・・。」
「そんな小さいこと気にしてないで、さっさと仕事しろよ。」
そう言われた大崎は、釘宮に「はい。」と言って仕事に戻ったのだった。
仕事に戻った大崎を見つつ、やはり釘宮は気になっていた。
あの席に座ったのは・・・本当に偶然だったのか?いや・・・男一人がふらっと入って来て座るような席じゃない。
「何もなければ良いんだが・・・。」
そう一人呟くと、釘宮は不安を掻き消す様に仕事へと集中したのだった。
一方その頃。
「雄君・・・あの声・・・。」
「あぁ・・・直ちゃんの兄さんだ・・・。」
ここは店の裏。そこに今、鈴野夜とメフィストの姿があった。
今日は早く仕事が終わり、二人は出掛けていた。が、部屋へ戻ろうと帰って来た時、事務所の少し開けられた窓から声が聞こえた。
そこから聞こえてきた声は大崎と・・・昔聞いたことのある懐かしい声・・・。
二人は悪いと思いつつも気になり、生け垣に隠れてそれを聞いていた。
だが、二人は話を聞いているうち、ふと思った。
―何故・・・ここに大崎がいることを知っている?―
大崎は天涯孤独だ。彼には家族も親戚もいない。
この<喫茶バロック>で働き始めた時、彼は友人すらいなかった。以前働いていた町も県を幾つかまたいでいるため、尚更行方など掴めようもない。
いや・・・彼は誰にも行方を知られまいと各地を転々としていたのだから、探偵ですらお手上げの筈なのだ。
大崎は懐かしさが先にたって不思議に思わなかったようだが、鈴野夜らはそれが引っ掛かってならなかった。
鈴野夜は暫く考えた後、決めたとばかりにメフィストへと言った。
「大崎と一緒に行くことにするよ。」
「はぁ!?雄君、まさか盗み聞きしたのバラしちゃうの?」
「違うよ。大崎の向かう場所は私達にも分かるじゃないか。こっちから先に誘うんだよ。あそこは海辺の町だし、久しぶりに行きたくなったと言えば偶然と思うだろ?」
そう言った鈴野夜に、メフィストはあからさまにバカにするような顔をして返した。
「そんなの直ぐバレるって。」
「バレたらその時はその時だ。お前だって心配なんだろ?」
「・・・そりゃまぁ・・・。」
メフィストは後ろ頭を掻きながら呟く。
だが、鈴野夜の次の言葉で目を丸くすることになった。
「それじゃ、留守番頼んだよ。」
「・・・はい?」
メフィストはキョトンと鈴野夜を見た。そんなメフィストに、鈴野夜は説明した。
「
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