第二話
I
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歯切れの悪い瀬田に、大崎は一瞬違和感を覚えた。いや、始めから違和感はあったが、それが何かが解らないのだ。
だが、大崎はそれを長く会わなかったからだと理解して話を聞いた。
瀬田孝には息子と娘がいる。娘は気の良い優しい女性に育ったが、息子はひねくれた性格に育ってしまい、悪友とつるんでは警察の厄介になる始末だった。
孝自信は自分自身で築いた小さな工場を経営していたが、息子の噂が広まるにつれて仕事も減少し、今は些か鬱状態が続いていると言う。
それに追い打ちをかけるように妻は娘を連れて実家に帰り、息子は家に寄り付かずにいると言うのだ。
それを聞いた瀬田は叔父を心配して急遽帰国し、直ぐに叔父の様子を見に行った。
しかし、その有り様は酷いもので、瀬田にすらどうして良いものか分からなかった。
そのため、瀬田は直ぐに大崎を探して訪ねたのだ。
「そんな・・・。」
話を聞いた大崎は茫然とした。
大崎は孝の息子も娘もよく知っている。その息子が、よもやそんな人間になっているとは夢にも思わなかった。
孝の息子の瀬田司は、大崎の記憶の中では未だ子供のままだ。真面目で明るく、妹の面倒を良く見る家族思いの優しい子供だった。
それがどうしてこんなことになったのか・・・。
「分かりました。俺で良ければ、明後日の休みにでも顔を出してみます。」
大崎がそう返答すると、瀬田は胸を撫で下ろしたと言った表情を見せて言った。
「他人の君にこんなことを頼むのは・・・本当はあってはならないんだが・・・。お願いするよ。」
「何言ってるんですか。正直、俺・・・あいつのこと、今も想ってるんですよ。こんな状態をあいつが知ったら・・・きっと助けたいと言った筈です。だから、気にしないで下さい。」
そう言った大崎に、瀬田は軽く笑みを浮かべた。
それはホッとした・・・と言うよりも、何処と無く寂しげな笑みだったが、大崎はそれに気付くことはなかった。
そうして大崎と瀬田は一頻り話を済ますと、静かに事務所を出たのだった。
だが、そんな二人の会話をひっそりと聞いていた者がいた。事務所の窓の外、その生け垣に紛れて話に耳を澄ましていたのだ。そして二人が話終えるや、スッとその姿は何処かへと消え、後には何も残されていなかった。
さて、大崎は先に瀬田を裏口から帰らせ、自身は釘宮の所へと向かった。客が何人か居たため、瀬田をそのまま店から帰らせる訳にはいかなかったのだ。
「終わったかい?」
「はい。」
そう言ってふとホールを見ると、そこには既に小野田の姿があった。いつの間に来たのやら大崎にはさっぱり気付かなかったが、まぁいいと思って釘宮へと再び振り返った。
「あの・・・彼のオーダー分、俺の給料から引いて下さい。」
大崎は申し訳ないと言った風に釘宮に言った。報告
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