第二話
I
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大崎がそう問うと、彼は難しい表情を見せた。
少なくとも、ここへ彼が偶然入ったとは考えられない。彼は本来なら、こんな所へ来ている筈はないのだ。いや、日本に居ない筈の彼がいる・・・と言った方が適切かも知れない。
この男性は瀬田真一。彼は一流企業で働き、今はアメリカ支社で勤務している筈なのだ。
「何でも言って下さい。俺なんかで役に立つんだったら。」
言いづらそうにしている瀬田に、大崎はそう声を掛けた。すると、真一は少し笑みを見せて口を開いた。
「ありがとう。えっと・・・先程の方は店長さんかい?」
「オーナーです。」
「そうか・・・。それじゃ済まなが、彼を呼んできてくれないか?」
「・・・?」
不思議に思いながらも、大崎は言われたるままに釘宮を呼ぶと、瀬田は自己紹介から入り、そうしてから釘宮にとあることを頼んだ。
「大変不躾極まりないのだが、少し彼と話がしたい。構わないだろうか?」
そう問う瀬田に、釘宮は直ぐに返した。
「どうぞ。見ての通り、今の時間帯は暇ですし、良ければ事務所の方が話しやすいと思いますが。」
「いや、そこまでご迷惑をお掛けする訳には・・・。」
「ですが、いつお客様がいらっしゃるか分からない店内では、話しづらいのでは?」
釘宮がそう返すと、瀬田は少し考えてから返答した。
「では、お言葉に甘えさせて頂こうかな。」
それを聞くや、釘宮は直ぐに大崎を呼んで案内させた。
大崎は最初は何事かとギョッとしていたが、釘宮から説明を受けて納得し、瀬田を事務所へと案内した。無論、テーブルのものは大崎が共に持っていったが。
大崎は事務所に入ると、手にしたものを机に置き、その場所を仕切りで区切った。一応、誰か入って来ても見えないように・・・と言っても、入って来て困るのは鈴野夜とメフィストなのだが。
さて、大崎と瀬田は向かい合って座ると、暫くは何から話して良いか分からずに黙していた。二人とも約十年のブランクがあるのだから仕方ない。
そこで大崎は沈黙を破って、自分から聞くことにした。
「真一さん。もしかして・・・両親に何か?」
「いや、父と母は健在だよ。実は・・・話しと言うのはうちのことじゃないんだ。」
「それじゃ・・・?」
大崎は首を傾げた。何せ十年も顔を合わせてなかったのだから、彼に検討がつくはずもないのだ。
瀬田は、そんな大崎に問い掛けた。
「なぁ・・・孝叔父のこと憶えてるか?」
「え?あぁ・・・。まさか・・・」
「まぁ・・・そうなんだ。叔父さん、君のこと気に入ってたからね。たまに電話すると君の話しばかりしてね。それで、ちょっと叔父さんを元気付けてほしいと思って。」
大崎は表情を歪めて瀬田へと問った。
「病気なんですか?」
「いや、まぁ・・・強ち間違いではないが・・・。」
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