4部分:第四章
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第四章
その梯子を前に出して言っていた大樹の方に持って行く。見れば見る程大きな樹であり見上げるだけで首が疲れてくる程である。
「本当に大きいな」
「そうだな」
三人はその木も見ている。本当に月に届きそうだ。
「これでよしだ」
「もういいのか」
「ああ」
ダルビは梯子を樹にかけてから二人に告げた。
「これでいいぜ」
「さて、後は登るだけだな」
バーンが言った。
「この梯子を」
「そうだな。登ればいいんだ」
ダルビはまた答える。
「それだけでいいからな」
「最初は誰にする?」
クリストフはまだ樹を見ている。樹を見たまま二人に述べる。
「登るのは」
「誰でもいいだろ」
ダルビはこれに関してはかなり適当であった。そこまで考えてはいなかったのだ。
「正直言ってな」
「誰でもいいのか」
クリストフはそれを聞いてどうにもといった感じで首を傾げた。
「じゃあ俺でいいか?」
「俺は別にいいぜ」
ダルビはそんなことはどうでもよかった。だから何の意味もなく頷いてみせた。
「誰でもな」
「御前は?」
「俺もな。別に」
バーンもそれは同じだった。
「三人しかいないしな。結局は」
「そうだよ、三人しかいないんだよ」
ダルビもそれを言う。それで特に焦ってはいないようであった。
「だから焦ることもないさ」
「そうだよ。じゃあさ」
バーンはダルビの言葉を聞いてからまたクリストフに告げた。
「最初に行けばいいさ」
「ああ、じゃあそれでいいな」
クリストフは二人に言われてそれを受け取った。
「俺が行くな」
「ああ」
「それじゃあな」
クリストフは梯子に足をかけた。そうして登りはじめる。
それにバーンが続いて最後にダルビが。一歩ずつしっかりと進んでいるとやがてそこにソ連軍の兵士達がやって来た。
「あいつ等何をやってるんだ?」
「おい、御前達」
兵士達を率いている将校がハンガリー語で三人に声をかけてきた。見れば厳しい顔をしておりかなり偉そうだ。如何にも侵略国家の軍人といった感じである。少なくともソ連が『平和国家』なぞではないのはすぐにわかる顔をしている。もっとも当時からソ連や共産主義勢力を『平和勢力』だの『平和国家』だの言えるのはかなり歴史や国際政治がわからないか特定のイデオロギーを妄信しているか特定の勢力と結託しているかであるが。いずれにせよ碌なものではないのは言うまでもない。
「何をしている」
「月に行くんだよ」
ダルビは将校に顔を向けて答えた。上から見下ろしていると随分小さく見える。あの威張り散らしているソ連軍の奴等もこんなに小さいのかと心の中で思う程であった。
「今からな」
「馬鹿な話だ」
将校はそれを聞いてすぐに三人を嘲笑うのだった。
「そん
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