第0話 私の終わり
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アレで私を傷つける気なのだろう。登校中の胸騒ぎはこの事だったのか。やっぱ最悪だ。こいつら全員悪魔だ。皆カッターを見てニヤニヤしてる。
私の心が恐怖でいっぱいになった。怖い、怖い怖い怖い怖い。
無意識に後退りをする。今までのイジメとは格が違う。運が悪ければ、“死”が待っているかもしれない。
「いいか?これであいつの腕を__」
私はそれ以上の言葉を聴きたくなくて教室からダッシュで逃げた。後ろから「待て!」等と聴こえるが待たない。というか、待てと言われて待つ奴なんているのだろうか。
この恐怖のなかでもし追いかけてくる不良を待ったら、すかさずカッターで切りつけられるだろう。
とにかく今は逃げるんだ。
・・・
学校から逃げて二時間。ランドセルは走っている時邪魔だったので道に捨ててきた。そして今は何処か分からない所にいる。前を見ても後ろを見ても高層ビルだらけ。外にはこんなスゴい場所があったのか。
私は外に行った場所が学校しかなかった。あの親共が外に出してくれなかったのだ。だから、公園と言う小さい子がたくさんいるらしい場所で遊んだことも無いし、何処かで私物を買ったりすることをしたことがない。だから、こんな所は新鮮だった。
暫く歩いていると、ふと、目に留まる一つの廃ビル。どうやらここは屋上に上れるようだ。私は、何かに吸い寄せられるように階段を上がっていく。階段の突き当たりに、小さな、少し埃を被った扉があった。そこを開けると、まず第一に青空が広がっている。しかし、屋上を囲っているフェンスは錆びていて、触っただけですぐに壊れてしまいそうだ。
…いっそ、ここで死んでしまおうか?
そんな馬鹿げた思想が脳裏を過る。いや、でもそれもいいかもしれない。どうせ家に帰っても学校に通っても苦しい毎日が永遠と続くだけだ。それに、今帰ったら本当に殺される可能性がある。そんなのはごめんだ。
なら、楽になった方がいい。自分でも分かってるつもりだ。これが逃げだって。
だけど
「…怖いものは、怖いんだよ…」
私は弱い。だからこんな最期を選んだ。
フェンスを飛び越え下を見下ろす。たくさんの人や車が行き交っている。いいよなぁお前らは。いいよなぁ幸せに生きられて。名前も顔も知らない人たちに向けてしまう嫉妬。醜いな、私は。
覚悟を決めて、何もない空虚へと一歩踏み出す。
落ちていく私の体。
下から聴こえる悲鳴と動揺の声。
上は、とても美しい青空が見える。
そうだなぁー…。
「来世は、幸せに生きたいなぁ」
私の意識はそこで途絶えた。
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