五十二話:子供の好きな物
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までたっても奥手なんだから」
「う……ごめん」
「私の全てはあなたの物なのに」
そう言って、拗ねたように頬を膨らませる黒歌。そんな姿に罪悪感と愛おしさを感じてしまう。正直なところ、どうして未だにそういった関係になれないのかは分かっている。今までは言った事は無かったけど……言わないと納得してくれないよな。俺は黒歌を抱き寄せて、驚く黒歌の着物をしっかりと整える。いつもは肌蹴させているけど、これからはちゃんと着て貰う。
「最近分かったことだけど、俺って独占欲が強いんだ。君が他の誰かと話をしているのを見るだけでイライラするし、君のあられもない姿を誰かに見られるのも嫌だ」
「うーん、でもこの服装は私のアイデンティティみたいなものだし―――」
そこまで言ったところで、黒歌を優しくソファーに押し倒す。そして、自分でもおかしいと思うほどの狂気の籠った眼で黒歌を見下ろして、ちょっと力を入れれば折れてしまいそうな首に手を添える。しばらく離れていた期間があったせいか俺の黒歌に対する依存度が上がった気がする。でも、仕方がない。そうなるようなことをしたのは他ならぬ黒歌達なんだから。
「このまま、縛り付けて俺以外の誰にも触れられないようにするのもいいかもな」
俺はそう言って、首に添えていない方の手で彼女の頬を優しく撫でる。それにつられて彼女の口から甘い吐息が出る。しかし、その目は次の段階への期待でも、緊張でもない、冷静な目で俺を見つめて来ていた。
「俺も君を抱きたい。この手で君を愛したい。……でも、それと同時に―――君を壊したい」
首に添えた手に力がこもる。今にも壊してしまいたいと俺の中の一面が叫び声を上げる。だが、そんな行動にも黒歌は抵抗一つ見せずに俺を黙って見つめるだけだ。
「他の誰かに奪われるくらいなら、失うぐらいなら。いっそ、俺の手で殺して俺だけのものにしてしまいたい」
愛の力は何よりも美しく尊いと同時に、何よりも醜く卑しい。愛は毒だ。適量なら、薬となり人を救うだろう。だが、一度その量を間違えれば己の身を滅ぼし、他者にまで被害を与えてしまうだろう。……もう一人の俺みたいにな。
そして、その愛の行きつく先は自分がこの世で最も愛する者だ。俺は黒歌の首筋に舌を這わし、甘噛みする。このまま喉を食いちぎれば彼女を永遠に束縛し俺だけのものに出来るだろう。でも、それは―――
「俺にとっては愛じゃない」
「……うん」
「俺にとっての愛は、君の幸せを何よりも願い、君の不幸を何よりも呪う事だ。だから、自己満足の為に君を縛り付けることは間違ってる」
「私がそれでもいいって言っても?」
「それでもだ。……だから、もう少し待ってくれ。俺が君を壊さずに
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