1部分:第一章
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」
声が大きく荒くなった彼をクリストフが制止した。
「外に聞こえるぜ」
「おっと」
ダルビは彼の注意を受けて慌ててすぐ側の窓を見下ろした。幸いそこにはソ連兵は通り掛かってはいなかった。
「アパートの中は大丈夫か」
「今いるのは俺達だけさ」
バーンが面白くないといった感じで答えた。
「皆憂さ晴らしにパブに行ったさ」
「イワン共がいないパブにか」
「そうさ」
ハンガリー人も酒が好きだ。そこれで憂さを晴らすのは彼等も同じである。もっともロシア人も酒は好きなのでわざと彼等がいないような店を選んでいるのだ。
「そこでな。皆飲んでるさ」
「皆同じなんだな」
ダルビはそれを聞いて思わず苦笑いを浮かべた。
「今が最高に面白くないのは」
「正直逃げたいさ」
クリストフは苦い顔をして述べた。
「今のこの国には。何の未練もないさ」
「ないか」
「じゃああるか?」
ダルビだけでなくバーンにも問うた。
「今のこの国に。イワン共に好き放題されてるこの国によ」
「それはな」
二人共その答えは決まっていた。ビールの味がさらに苦くまずいものになるのを感じながら言うのだった。
「今はないな」
「ないか」
ダルビはわかっていたとはいえバーンの言葉に落胆した顔になった。
「やっぱりそうか」
「昔はあったのにな」
クリストフは俯いてこう呟いた。
「今は完全になくなったな」
「亡命でもしたいんだがな」
ダルビはかなり危ない言葉を出した。これは周りにいる蓋衛を信頼しているからこその言葉だが流石に二人もこの言葉には目を剣呑にさせた。
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