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戦国異伝
第二百四話 箱根八里その五
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「だからじゃ」
「九鬼殿を呼ばれ」
「そのうえで」
「攻めるのじゃ。しかしあれはまだじゃ」
 ここでこうも言ったのだった。
「あれはな」
「船では、ですか」
「運んでおりませぬな」
「まだな。いざとなればそうするが」
 しかし今は、というのだ。
「その時ではないからな」
「では東海道を通り」
「そうして運んでいますか」
「そうじゃ、しかし鉄甲船は呼んでおる」
 この船はというのだ。
「それも間もなく来る、そしてじゃ」
「撃ちますか」
 幸村は信長の目を見て問うた。
「そのうえで」
「それはあれも来てからじゃ」
 それからだというのだ、ものごとを素早く進める信長だが今は違っていた。比較的落ち着いておりそのうえでの考えであり言葉だった。
「そのうえでじゃ」
「撃つと」
「謀も合わせてな」
 小田原城に篭る北条の者達に仕掛けるというのだ。
「そうする」
「今は囲むだけで」
「まだもう暫くはな」
 撃つことも策を仕掛けることもしないというのだ。
「休むぞ」
「しかし殿」 
 幸村と入れ替わる様に兼続が言って来た。
「城が出来たのです、ここで何もしないことは」
「うむ、それはわかっておる」
「ではここは」
「夜に宴を開く」
「宴をですか」
「小田原の兵達にそれを見せる」
「昨日兵達に酒を飲ませると言っていましたな」
 兼続は信長が宴を開くと聞いてこのことを思い出した、それで言うのだった。
「そういうことですか」
「わかったな」
「はい、ただ酒を飲ませるだけでなく」
「その飲む姿を北条の者達に見せるのじゃ」
「我等の余裕を見せますか」
「大いにな」
 信長は笑みさえ浮かべて兼続に答えた。
「そういうことじゃ」
「左様ですか、では」
「美味いものも出す、ふんだんにな」
「飯にも困っていぬところを見せますか」
「余裕を見せるのも戦のうちじゃ」
 そうしたこともまた、というのだ。
「それをするぞ。よいな」
「さすれば」
 こうしてこの夜はあえて宴を開き小田原の者達に自分達の余裕を見せた、そのうえでだった。
 次の動きの用意を進めていた、そしてその時箱根に向けて家康の軍勢が兵を進めていた。家康はその中で兵を休ませている時に四天王に問うた。
「兵達は疲れておらぬな」
「はい、道は険しいですが」
「疲れてはおりませぬ」
 四天王は家康の問いに確かな声で答えた。
「意気軒昂として進んでおります」
「余裕さえあります」
「流石徳川の兵じゃな」
 家康は彼等の言葉を受けて笑顔で述べた。
「ならよい」
「はい、それでは」
「箱根を抑えましょう」
「そしてそのうえで」
「兵を新たに呼びましょう」
「駿河、遠江が遂に我等のものとなった」 
 徳川の領地と
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