第一部
第五章 〜再上洛〜
六十四 〜人を想うという事〜
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もか。
「かなりの長旅になるのだぞ? 皆が耐えられるか?」
「……でも、置いてきぼりは、ダメ」
恋は譲るつもりはないらしい。
だが、やはり現実的ではない話だ。
となれば、妥協策を講じる他あるまいな。
「恋。やはり、皆は無理だ」
「(フルフル)」
「まぁ、聞け。ただし、この洛陽には置かぬ」
「どういう事か、ねねにもわかりませんぞ?」
その間にも、恋は嫌々と頭を振っている。
「ギョウにて、皆の家を構えるというのはどうか?」
「……ギョウで?」
「そうだ。幽州と冀州は隣り合わせ。洛陽ならともかく、冀州との往来であれば日数もかからず、しかも宦官共の目も届くまい」
「…………」
「恋。お前が我を通さば、大切な家族を失う事になりかねぬのだぞ? 確かにお前は天下無双、だが一人で全てを守ろうなどとは思うな」
「……でも、恋は強い。……みんな、守ってみせる」
「覚悟は良い。だがな、お前の家族は、皆がお前と同じ強靭さを持っている訳ではないぞ?」
「…………」
俯く恋。
「何も永遠に別れよ、と申しているのではない。折を見て会いに行く事を許さぬような白蓮ではないであろうしな」
「恋殿。ねねも、歳三殿と同じ意見ですぞ」
「……わかった」
まだ、寂しげではあったが、どうやら納得したようだ。
そう見た私は、恋に問いかけた。
「つかぬ事を聞くが……恋。お前、以前と私の呼称が違うようだが」
小さく頷く恋。
「些細な事ではあるが、何故か。良ければ理由を聞かせてくれぬか?」
「…………」
「言いたくなければ無理にとは申さぬ。好きに呼べ、と申したのは私だからな」
「……違う」
恋が、ポツリと呟く。
「違う? 何が違うのだ?」
「……歳三は、月のお父さん。……月の家族は、歳三と白兎(董旻)だけ」
「…………」
「……恋には、セキトもいる。他にも、家族がたくさん。……だから、恋が歳三を兄ぃと呼んだら、ダメ」
なるほどな。
恋なりに気を遣っての事だったとは、な。
「……月、歳三と一緒だと、とても嬉しそう。だから、恋が邪魔しちゃ、いけない」
「恋。理由はわかったが……勘違いしておらぬか?」
「……?」
「確かに、私は月の父。だがな恋、お前が私を兄と呼んだとて、その関係は変わらぬ。月とて、気にはすまい」
「……じゃあ、いいの?」
「申したであろう? 気遣いは嬉しいが、お前が私を兄と思うのなら、別に構わぬ」
恋の髪を、そっと撫でてやる。
「……ん。わかった、兄ぃ」
目を細める恋の隣で、ねねが膨れている。
「如何致した?」
「な、何でもありませんぞ!」
そう言いながらも、横目で恋を見ては、慌てて視線を逸らしているのだが。
……ふむ、そう言う訳か。
空いた左手で、同じよ
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