第一部
第五章 〜再上洛〜
六十四 〜人を想うという事〜
[4/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
……このままでは、いずれ地方の不満が爆発するやも知れぬ。
黄巾党も、未だ残党が各地に残っている。
華琳のような地方軍閥も、今の朝廷の有り様には見切りをつけるであろう。
そうなれば……。
「詠。ならば奴らの言い立てを逆手に取ってはどうか?」
「どういう事?」
詠は、眉を顰める。
「軍を、解散してしまうのだ。さすれば、奴らも月を利用出来なくなろう」
「じ、冗談言わないでよ! そうなったら、月の身がますます危うくなるわよ!」
「落ち着け、詠」
「落ち着けないわよ! だいたい、ボクだけじゃない、皆が承知する筈ないわ!」
「詠ちゃん。お気持ちはわかりますけど、まずはお兄さんの話を聴きませんかー?」
「そうだぞ、詠。歳三殿がただ無意味に膝を屈するような事を仰せになる訳があるまい?」
「……わ、わかったわよ」
二人に諭され、詠は押し黙る。
「無論、月一人にせよとは申さぬ。詠と閃華、二人はそのままとする」
「……恋や霞、ねねは?」
「洛陽には置けまい、宦官共の疑念が晴れぬからな。恋と霞には、私から話す」
ねねは……恋とは離れる事はあるまい。
「……歳三。アンタの事だから、唯々諾々と十常侍に従うつもりはないのでしょうけど。でも、月を危ない目に遭わせない事。勿論、アンタ自身も無茶はダメよ。月を悲しませたくないからね」
「おやおや、詠ちゃん。本当にそれは、月さんだけですか?」
「な、何よ風?」
「いえいえ。顔に、お兄さんの事が心配ですよーと書いてありますから。ねぇ、疾風ちゃん?」
「ああ。詠も、歳三殿が気がかりなのだな?」
二人にからかわれ、詠はみるみるうちに真っ赤になる。
「な、何でボクが!」
「あれれ、違うのですか?」
「ち、ちょっと歳三! 何とか言いなさいよ!」
「では、気遣い痛み入る、とでも申しておくか」
「うう〜、歳三まで……。こ、こうなったら、意地でもアンタ、無事に帰って来なさいよ! でないと承知しないんだからねっ!」
そのまま、部屋を出て行ってしまった。
……話は済んでいる故、問題はないのだが。
「素直じゃありませんねー」
「ふふ、確かにな」
そして、いつも以上に意気投合する二人であった。
私はまず、霞の説得から始める事にした。
「で、ウチは馬騰はんトコ行け、っちゅうんやな?」
「そうだ。馬騰には無論、私から話を通しておくが」
「タマなし共の警戒心を緩める、それはわかる。あと、馬騰はんトコなんは、ウチに騎馬隊を編成させるつもりやね?」
「流石に察しが良いな。形式上、月の兵は一度郷里に連れていき、解散させる。……だが、自発的に集まる事まで、奴らに咎め立ては出来まい」
「せやろうな。で、そいつらを騎馬隊として鍛え上げる。……機動力さえあれば、いざ何かあっても駆けつけ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ